マウイ島

ハワイの柿

ホノルル市内のスーパーに並ぶ富有柿
冬の楽しみ 南国ハワイの果物といえば、マンゴー、パパイヤ、パイナップルなどを普通は思い浮かべるだろう。バナナ、アボカド、最近はドラゴンフルーツ(ピタヤ)も人気だ。そんなフルーツ天国ハワイの人々が——私も含めて——毎年10月~12月の短い季節限定で楽しみにしている意外な果物が柿である。 ハワイで出会った日本の柿 日本の秋冬を代表する果物のひとつだが、アメリカ人が柿を好んで食べるというイメージはまったくなかった。実際、1990年以前のハワイでは、柿は今ほどポピュラーな果物ではなかったらしい。だから私は、ハワイのスーパーマーケットで普通に柿が並んでいるのを初めて見たとき、その意外な出会いに驚いて思わず買ったことを覚えている。 ハワイの柿は、富有柿(ふゆうがき)や蜂屋柿(はちやがき)などの日本の品種で、スーパーや青果店では、それぞれローマ字で「Fuyu」、「Hachiya」と表記される。シーズン前半には「Maru」という黄色い品種もある。 Fuyu(富有) シャクシャクとした食感のFuyu(富有) 鮮やかなオレンジ色の甘柿。ハワイで流通している柿のほとんどはこの品種。シャクシャクとした食感。 Hachiya(蜂屋) クリーミーなHachiya(蜂屋) やや細長く、先が尖っている渋柿。収穫してすぐは渋くて食べられないが、追熟させて柔らかくなると、強い甘味を持つようになる。とろりとしたクリーミーな舌触り。スプーンですくって食べるほか、凍らせて食べる人も多い。 Maru 黄色っぽい渋柿。渋抜き処理を施してから出荷される。渋抜き後は、前の2品種よりも甘くなり、味も良いという。残念ながら私はまだ見たことも食べたこともない。 値段 2016年10~11月にホノルル市内で調べてみたところ、町の小さなポップアップ・ストアの青果店では、1ポンド(約450グラム)あたり1.99~2.99ドル(表記はなかったがおそらくFuyu)、スーパーマーケットでは2.99ドル(Fuyu)、日系のスーパーでは3.59ドル(Fuyu)、グルメスーパーとよばれる比較的高級な店(ホールフーズなど)ではFuyuが5.99ドル、Hachiyaが6.99ドルだった。 1個の重さはだいたい0.40ポンドくらいだから、1.99ドル/ポンドの場合は1個0.80セント、6.99ドル/ポンドの場合は1個2ドル80セントということになる。このように店によって値段は3倍以上も変わるが、グルメスーパーをのぞけば普通の相場はだいたい1個1ドル前後というところだろうか。 マウイ島クラの柿農園 マウイ島にそびえる巨峰ハレアカラー山(3,055m)。その西側の裾野にクラ地区がある。真夏の日中でも気温が25度を超えることはなく、冬の朝方は10度以下まで下がる。ハワイのなかでは冷涼な地域である。降水量も少ない。この気候が、柿の木を育てるのに適しているという。 そんなクラの地に、ハシモト・パーシモン・ファーム(Hashimoto Persimmon Farm)という100年以上の歴史を持つ柿の果樹園がある。Shinichi Hashimotoさんという日系1世の人が開いた農園だ。現在もかれの子孫のハシモト一家によって経営されていて、ハワイ産の柿のほとんどがこの果樹園と近所にあるもうひとつの果樹園で収穫されたものである。全収穫の半分は、農園で直売されるという。 ハワイで流通している柿のほとんどはカリフォルニアなどのアメリカ本土産であるが、たまにハワイ産のものもある。店頭で「Local」や「Locally Grown」、あるいは「Grown in Hawaii」などと記されていたら、それがマウイ島クラ産の柿である。せっかくハワイにいるなら、クラの柿を味わいたい。 写真はすべて筆者による撮影

ラハイナヌーン:太陽が真上にくる日(2024年日程あり)

北回帰線よりも南に位置するハワイ 地球上で南北の回帰線の間にある熱帯地域のみ、太陽が天頂を通過する。冬至のときに太陽が真上にくる地点をつなげたのが南回帰線、夏至のときに太陽が真上にくる地点をつなげたのが北回帰線だ。 ハワイの主要8島は北回帰線よりも南に位置するので、太陽が真上にくる日が年に2回ある。日本やアメリカ合衆国本土では見られないない現象だ。この現象は、ハワイではラハイナ・ヌーン(Lahaina Noon)と呼ばれている。 春と夏のラハイナヌーン 太陽が真上にくる地点は、冬至を境に南回帰線から徐々に北上するわけだが、ハワイでは5月後半にその年最初のラハイナヌーンがくる。太陽が真上にくる地点はハワイを過ぎてさらに北上し、夏至の日(6月22日ごろ)にハワイよりやや北にある北回帰線に到達すると、今度は南下を始め、ハワイでは7月半ば頃に2度目のラハイナヌーンを迎えることになる。 5月の1回目のラハイナヌーンは「Spring Lahaina Noon(春のラハイナヌーン)」と呼ばれ、7月の2回目のラハイナヌーンは「Summer Lahaina Noon(夏のラハイナヌーン)」と呼ばれる。 ラハイナヌーンの日は、ハワイ州内でも緯度によって異なる。太陽が真上にくる地点が北上していく春のラハイナヌーンは、2024年のホノルルでは5月27日だが、例えばホノルルより南にあるヒロ(ハワイ島)ではそれより9日早い5月18日であり、ホノルルより北にあるリーフエ(カウアイ島)では、5月30日にラハイナヌーンを迎える。逆に太陽が真上にくる地点が南下していく夏のラハイナヌーンは、この3都市でいうとリーフエ(7月10日)、ホノルル(7月15日)、ヒロ(7月23日)の順でやってくることになる。 2024年春のラハイナヌーン ヒロ(ハワイ島):5月18日(土)午後12時16分 カフルイ(マウイ島):5月25日(土)午後12時22分 ホノルル(オアフ島):5月27日(月)午後12時28分 リーフエ(カウアイ島):5月30日(木)午後12時35分 2024年夏のラハイナヌーン リーフエ(カウアイ島):7月10日(水)午後12時43分 ホノルル(オアフ島):7月15日(月)午後12時37分 カフルイ(マウイ島):7月17日(水)午後12時32分 ヒロ(ハワイ島):7月23日(火)午後12時26分 参照:https://www.bishopmuseum.org/lahaina-noon/ 灼熱の太陽が最高点に達する昼 ラハイナヌーンという名前は、1990年にホノルルのビショップ博物館によって行われたコンテストで選ばれた名前である。ハワイ語で「la」(正確には「lā」)は太陽のことで、「haina」(正確には「hainā」)には「過酷な」や「残酷な」という意味がある。「noon」は正午や最高点という意味の英語で、つまりラハイナヌーンとは「灼熱の太陽が最高点に達する昼」という意味である。 影が体の中に宿る時間 自然の観察に長けていたことで知られる古代ハワイ人が、年に二度起こるこの現象を知っていたのかどうか調べてみたが、わからなかった。1990年にわざわざラハイナヌーンを新語として造ったということは、この現象をさすハワイ語はなかったかと思われる。 ただし、毎日の正午のことを表すフレーズとして「カウカラーイカロロ、アホイケアカイケキノ(kau ka lā i ka lolo, a hoʻi ke aka i ke kino)」というのがある。まるでなにかの呪文のようにも聞こえるが、「太陽が頭の上にあり、影が体の中に宿る時間」という意味になる。ハワイ人は、太陽が最も高い位置に来る正午を、マナが宿るスピリチュアルな時間だと考えていたようである。 マウイ島のラハイナ 現在は観光地として人気があるラハイナ ラハイナといえば、1820年から1845年までハワイの首都だった、マウイ島のラハイナ(Lahaina)という町を思い浮かべる人も多いだろう。この地名は古くは「Lāhainā(ラーハイナー)」と発音されていたそうで、直訳すると「残酷な太陽」となる。干ばつが地名の由来であると考えられている。 ラハイナヌーンの時間に、平らな地面で例えばペットボトルを立ててみると、太陽が真上にあるので当然影がない。5月末や7月半ばにハワイにいる方は、この年に2度の珍しい現象を体験できる。 2016年5月26日のラハイナヌーン時に撮影。太陽が真上にあるため、コーンの影がない 写真はすべて筆者による撮影