野鳥

レイの歴史

イリマとピーカケのレイ
古代のレイ 輪状のアクセサリーを首や頭につけるという行為の起源は、古代まで遡ると言われている。骨、歯、貝殻などで作られた古代人のネックレスが世界各地から発掘されているからだ。装飾のため、職業や階級を表すため、権力を誇示するため、愛する人から贈られたため、穢れを祓うため、運気を上げるためなど、身につける理由は様々だったろう。 「レイ」としてのちにハワイで成熟した文化は、アジア経由でポリネシアの島々を伝わっていったとされている。4~5世紀(年代には諸説あり)に南方のマルキーズ諸島やソシエテ諸島からハワイに最初にやってきて定住したとされるポリネシア人は、チャントや踊りなどの豊かな文化を持っていた。レイも彼らの文化の一つだった。万里の波濤をこえてたどりついた新しい土地ハワイでは、レイ作りに適した植物が生い茂り、花が咲き乱れ、カラフルな美しい鳥たちがたくさん住んでいた。ポリネシア人たちは喜んだに違いない。 古典フラを踊る女性。首には伝統的なマイレのレイ、手足にはククイのレイがつけられている | イラスト:崎津 鮠太郎 昔のハワイでは、レイのうちのいくつかは特定の踊り(フラ)や宗教的な儀式に関連したものだった。植物を使った最も初期のレイは、マイレ(maile)の葉と樹皮で作られたものや、ハラ(hala)の実を繋げてネックレスにしたものなどだった。他にも種子、木の実、木、動物の骨や歯、鳥の羽根、貝殻、人の髪の毛などからレイが作られた。 頭につけるものはレイ・ポオ(lei poʻo)、首につけるものはレイ・アーイー(lei ʻāʻī)、手首や足首につけるものはクーペエ(kūpeʻe)と呼ばれた。腕のいいレイ作りの職人は人々から尊敬されていた。 マッコウクジラの歯のレイ マッコウクジラの歯をフックの形に彫り刻んだものを、人の毛髪を使って堅く編んだ紐につけて首にかけるレイは、レイ・パラオア(lei palaoa)、またはレイ・二ホ・パラオア(lei niho palaoa)と呼ばれた。このもっとも崇高なレイは、位の高いアリイ(aliʻi、貴族)のシンボルであったという。 レイ・二ホ・パラオア | 写真:Pharos / Public Domain 鳥の羽根のレイ イイヴィ(ベニハワイミツスイ)| 写真:崎津 鮠太郎 鳥の羽根から作られるレイは、レイ・フル・マヌ(lei hulu manu)と呼ばれた。アリイたちは、自分の権力を誇示するためにさまざまな色や模様のレイ・フル・マヌを持つことを競い合った。そのため、羽根の価値が上がり、鳥を獲るための職業集団ポエ・カハイ・マヌ(poʻe kahai manu)が活躍した。 レイには、森に住む小型の鳥の羽根が主に使われた。黄色い羽根がもっとも価値があるとされ、赤色がそれに続いた。黒色と緑色はもっとも価値が低かった。マモ(mamo)の濃い黄色い羽根がもっとも価値が高かった。オーオー(ʻōʻō)の明るい黄色の羽根が次に価値が高かった。赤い羽根はイイヴィ(ʻiʻiwi)とアパパネ(ʻapapane)から取られた。マモとオーオーは、残念ながら絶滅してしまった。 貝殻のレイ 貝殻から作られるレイは、レイ・プープー(lei pūpū)と呼ばれた。ニイハウ島とカウアイ島で集められたカヘレラニ(kahelelani)やモミ(momi)という貝の殻で作られたレイは、レイ・プープー・オ・ニイハウ(lei pūpū o Niʻihau)と呼ばれ、特に珍重された。長さ約90cmの輪をひとつ作るのに200個以上の貝殻が使われ、レイにするためにはさらに数個の輪を必要とした。 ククイのレイ ククイの実 | 写真:崎津 鮠太郎 1778年に記録上はヨーロッパ人として最初にハワイにやってきたジェームス・クック(Captain James Cook、1728–1779)は、ハワイ人たちがククイ(kukui)の種子をつなげて作ったレイを身につけていたことを記録している。ククイはトウダイグサ科の高木で、古代ポリネシア人がハワイに持ち込んだ植物のひとつである。1959年より『ハワイ州の木』に指定されている。ハワイ人は、熟して木から落ちたククイの実を集め、種子を磨いて光沢のある美しいレイを作った。ククイのレイは、今日でも人気がある定番のレイである。 レイの衰退と復活 クックのハワイ到達以降は、欧米の近代文明とキリスト教がハワイに広がった。フラを踊ることなどのあらゆる伝統的な風俗や行事が制限された。このことは、当然レイ文化にも大きく影響し、ハワイ文化は衰退した。 文化だけではなく、自然への影響も大きかった。それまでハワイにはいなかった種類の害虫や植物が移入され、レイ作りに欠かせない花や鳥の多くが森から消えてしまった。 しかし、クックのハワイ到達から約100年後、ハワイ文化は大きく復興することになる。1874年、デイヴィッド・カラーカウア(David Kalākaua、1836–1891)がハワイ国王になった。メリーモナーク(Merrie Monarch、陽気な王)とも呼ばれたカラーカウアは、フラを始めとしたハワイ文化を大いに復活させた。王の客人の首には豪華な花のレイがかけられた。カラーカウア統治時代の人々は、男も女も毎日レイをつけて盛装した。 19世紀後半から20世紀の初め頃までは、船でハワイに到着したりハワイを出発する観光客一人一人にレイが贈呈された。ハワイを出発するときには、船がダイヤモンドヘッドの沖を通るあたりで客達がレイを海に投げるのがお決まりの儀式のようなものだったという。もしレイが岸に向かって流れていけば、またいつの日かハワイに戻ってくることができると言われていた。 今日、ハワイのレイ文化は歴史上もっとも栄えているだろう。フラのダンサー達は色とりどりの美しいレイを身につけて、人々を魅了する。フラは、今では日本でも大変人気があり、それに伴い日本でのレイメイキングの人気も高まりつつある。 もともとハワイになかった外来植物の花や葉も次々とレイの素材になっていった。さらには植物だけでなく、その他の新しい素材も積極的に使われ、ビーズ、リボン、布地のほか、紙幣、菓子、ゴルフボールなどからもレイが作られる。 アロハスピリットを形にしたもの 空港で、卒業式で、結婚式で、誕生会で、授賞式で、ルーアウ(lūaʻu、宴会)で、そして葬式で——ハワイで暮らしていると様々な場面でレイが登場し、重要な役割を担う。歓迎、送別、祝福、愛、友情、別れなど、それぞれの場面で「アロハ」の思いを込めて、ときには人にレイを贈り、ときには人からレイが贈られる。レイを人の首ににかけて渡すことは、相手に最大の親しみをこめて挨拶をすることであり、友情や愛情を形にして渡すことである。レイは、アロハスピリットの象徴なのである。 参考文献 Marie A. McDonald『Ka Lei: The Leis of Hawaii』Ku Paʻa Incorporated, Press Pacifica(1978年) Ronn Ronck『The Hawaiian Lei: A Traditional of Aloha』Mutual Publishing(1997年) Laurie Shimizu『Hawaiian Lei Making: Step-by-Step...

ハワイの野鳥の歴史

アキアポーラーアウ(カワリカマハシハワイミツスイ)
ハワイ在来の鳥たちの祖先 地球上もっとも隔絶した群島であるハワイは、ほとんどの動物にとって、自力で辿り着くにはあまりにも遠い。このことは、ハワイには陸生の爬虫類も両生類も在来種としては存在しないことでもわかる。陸生の哺乳類ではコウモリがいるのみである。ハワイが地理的にいかに隔絶しているかは、『ハワイの花と植物の歴史』の冒頭で書いた。 空を自由に飛ぶことができる鳥たちにとっても、ハワイはあまりにも巨大な海のバリアで囲まれている。ハトも、メジロも、カワセミも、ツバメも、ハワイに到達しておらず、もし到達したとしても、定着できなかった。 そんな絶海の孤島ハワイにも、長旅に適応していたいくつかの鳥類が、長い歴史のどこかでたどり着いて定着することができた。現在生き残っているハワイ在来の鳥類は、海鳥や渡り鳥を除くと、大昔にハワイにたどり着いて定着したわずか13種類の鳥の子孫たちである。ガン、カモ、サギ、バン、オオバン、セイタカシギ、タカ、フクロウ、カラス、カササギヒタキ、ツグミ、フィンチ(マシコ)、ヨシキリの13種である。 アトリ科 Fringillidae 亜種も含めて50以上のハワイミツスイ類(Hawaiian honeycreepers)が知られる。たった1種のフィンチから、生活環境に合わせて嘴、体の色、大きさ、鳴き声、生態が異なる多くの種に分化し、それぞれ独自に進化していったグループである。このような、単一の祖先が多様なニッチ(生態的地位)に適応して起こる種の分化を適応放散(adaptive radiation)という。残念ながら、ハワイミツスイ類の半数以上がすでに絶滅した。 色も形も様々なハワイミツスイ類。左上:アパパネ(アカハワイミツスイ)、右上:マウイ・アラウアヒオ(マウイ・クリーパー)、左下:パリラ(キムネハワイマシコ)、右下:イイヴィ(ベニハワイミツスイ)| 写真:崎津 鮠太郎 ハワイで野鳥に興味を持つと、誰しもが必ずハワイミツスイに行き着くだろう。この宝石のように美しい鳥たちについては、あらためて別の記事を書こうと思っている。 カササギヒタキ科 Monarchidae エレパイオ(ハワイヒタキ、ʻElepaio)が、カウアイ島、オアフ島、ハワイ島にそれぞれ固有種として分布する。 左からカウアイ島、オアフ島、ハワイ島のエレパイオ | 写真:崎津 鮠太郎 カモ科 Anatidae コロア(ハワイマガモ、Koloa)とレイサン・ダックの2種のカモと、1種のガンがいる。ガンは、現在『ハワイ州の鳥』であるネーネー(ハワイガン、Nēnē)。 ネーネー(ハワイガン)| 写真:崎津 鮠太郎 カラス科 Corvidae アララー(ハワイガラス、ʻAlalā)1種が、保護のもとでかろうじて絶滅を免れて生息している。半化石の記録からは、少なくとも他に2種のカラスがハワイ島に生息していたことがわかっているという。 クイナ科 Rallidae 以前は少なくとも6種のクイナ類がいたが、すべて絶滅した。他にはアラエ・ウラ(バン、ʻAlae ʻUla)とアラエ・ケオケオ(オオバン、ʻAlae Keʻokeʻo)がそれぞれ1種ずつ生き残っているが、どちらとも絶滅の危機に瀕している。 左:アラエ・ウラ(バン)、右:アラエ・ケオケオ(ハワイオオバン)| 写真:崎津 鮠太郎 サギ科 Ardeidae アウクウ(ゴイサギ、ʻAukuʻu)が在来種として生息する。ヨーロッパ、アフリカ、アジア、アメリカ大陸に広く分布する。ハワイに生息する鳥のなかで陸生の在来種はほとんどが固有種か固有亜種だが、アウクウはその中では珍しく他の地域にも生息する在来種である。 アウクウ(ゴイサギ)| 写真:崎津 鮠太郎 セイタカシギ科 Recurvirostridae アエオ(クロエリセイタカシギ、ʻAeʻo)が生息する。固有亜種。 アエオ(クロエリセイタカシギ)| 写真:崎津 鮠太郎 タカ科 Accipitridae イオ(ハワイノスリ、ʻIo)がハワイ島に生息する。大昔にはカウアイ島、オアフ島、モロカイ島にも生息していたことが化石からわかっている。 イオ(ハワイノスリ)| 写真:崎津 鮠太郎 ツグミ科 Turdidae 5種のツグミの仲間が知られている。現在生息しているのはオーマオ(ハワイツグミ、ʻŌmaʻo)、とプアイオヒ(Puaiohi)のみ。オーマオはハワイ島固有種。プアイオヒはカウアイ島固有種。 オーマオ(ハワイツグミ)| 写真:崎津 鮠太郎 トキ科 Threskiornithidae 半化石の調査から、大昔には空を飛べないトキの仲間がいたことがわかっている。 フクロウ科 Strigidae プエオ(コミミズク、Pueo)が生息する。固有亜種。 プエオ(コミミズク)| 写真:Forest & Kim Starr ヨシキリ科 Acrocephalidae 北西ハワイ諸島のレイサン島とニホア島のレイサンヨシキリ(Millerbird)が知られる。レイサン島の基亜種(Acrocephalus familiaris familiaris)は、島に移入されたウサギが原因で20世紀の初頭に絶滅した。ニホア島の亜種(Acrocephalus familiaris kingi)も絶滅の危機に瀕している。先祖はアジアから来たヨシキリの仲間とされる。2011年、ニホア島の亜種をレイサン島に数羽放して、レイサン島のレイサンヨシキリを復活させる試みが行われた。最初の年には17羽が巣立ったという。 Mohoidae(日本語の科名なし) ある鳥がハワイに定着後に分化して、Mohoidaeというハワイ固有の科になった。長い間、この「ある鳥」はオーストラリア方面から来たミツスイの仲間だと考えられていたが、近年は、北アメリカから来たレンジャクモドキの仲間だとされている。以下の5種が知られるが、残念ながらすべて絶滅した。 カウアイ・オーオー(キモモミツスイ) Kauaʻi ʻŌʻō(ʻŌʻōʻāʻā) 学名:Moho braccatus カウアイ島固有種・絶滅種 オアフ・オーオー(ワキフサミツスイ) Oʻahu ʻŌʻō 学名:Moho apicalis オアフ島固有種・絶滅種 モロカイ・オーオー/ビショップス・オーオー(ミミフサミツスイ) Molokaʻi ʻŌʻō (Bishop’s ʻŌʻō) 学名:Moho bishopi モロカイ島固有種・絶滅種 ハワイ・オーオー(ムネフサミツスイ) Hawaiʻi ʻŌʻō 学名:Moho nobilis ハワイ島固有種・絶滅種 キオエア(クロツラミツスイ) Kioea 学名:Chaetoptila angustipluma ハワイ島固有種・絶滅種 人間の定住後 人間が定住するまでの長い間、ハワイには野鳥にとって天敵も競争者もいなかった。蚊もアリもいなかった。なかには飛ぶ必要さえなくなり、進化の過程で飛ぶ能力を失った鳥も少なくない。しかし、この鳥たちの楽園ハワイは、人間が現れてから一変することになる。 ハワイ最初の定住民であるポリネシア人が、約4~5世紀に南方からハワイにやってきて定住した。鳥たちは人間を恐れなかったため、大量に捕まえられて食料になり、羽が装飾に使われた。 ポリネシア人の定着から、その後ジェームス・クック(Captain James...

ハワイの地名:鳥名がつく地名

イヴァ(オオグンカンドリ)
前回の記事では、ハワイ語で鳥という意味の「manu」がつく地名を紹介した。今回は、いろいろな鳥の名前がつく地名を探してみる。地名というが、前回同様、山や川などの名前も含めて紹介する。 アエオ ʻAeʻo(セイタカシギ)の地名 アエオ(クロエリセイタカシギ) ククルアエオ Kukuluaeʻo ホノルルのケワロ港(Kewalo Basin)に面していた区画の名前。ククルアエオは、アエオの別名。現在の町の姿からは想像しがたいが、昔は沼地で、塩田や魚の養殖池などがあったそうだ。当然、アエオもたくさんすんでいたであろう。 アラエ ʻAlae(バン)の地名 アラエ・ウラ(バン) アラエ ʻAlae ハワイ島のホノムー(Honomū)と、マウイ島のクラ(Kula)にある地名。また、ハワイ島のキーラウエア・クレーター(Kīlauea Crater)近くにあるクレーターや、モロカイ島にあるの山の名前にもある。 アラエ・イキ ʻAlae Iki マウイ島のキーパフル(Kīpahulu)近くにある地名。直訳すると「小鷭」 アラエ・ヌイ ʻAlae Nui アラエ・イキの近くにある地名。直訳すると「大鷭」 アラエロア ʻAlaeloa マウイ島のホノルア(Honolua)にある地名。直訳すると「遠鷭」 アラエロア・ヌイ ʻAlaeloa Nui マウイ島のホノルア(Honolua)にある地名。直訳すると「遠小鷭」 ナーアラエ Nāʻalae マウイ島のプウオカリ(Puʻuokali)にある峡谷の名前。「nā」は結びつく名詞が複数の場合に使われる冠詞で、英語では通常「the」と訳される。 ワイアラエ Waiʻalae ホノルルのウィルへルミナ・ライズ(Wilhelmina Rise)とアーイナ・ハイナ(ʻĀina Haina)の間に位置する地区の名前。直訳すると「鷭水」となり、この場所の湧水にちなんだ名前だと伝えられている。ワイアラエのすぐ近くにあるダイヤモンドヘッドにも昔はバンがいたというから、ワイアラエにも昔は水辺があって、たくさんのバンがすんでいたのだろう。今の町並からは全く想像できない。 余談だが、カーハラ(Kāhala)とカイムキー(Kaimukī)を東西に走るその名もずばりワイアラエ通りに、「Mud Hen Water」という雰囲気のいいレストランがある。このMud Henとはバンのことで、つまり店の名前はワイアラエを英語にしたものである。 カイムキーのワイアラエ通りにあるレストラン Mud Hen Water は、ワイアラエを英語に直訳した名前である。 またワイアラエは、カウアイ島のワイメア(Waimea)にある川、滝、山の名前にもある。 アララー ʻAlalā(カラス)の地名 プウアララー Puʻuʻalalā ニイハウ島北東部にある丘の名前。標高64メートル。直訳すると「烏丘」 ワイアカアララー Waiakaʻalalā ハワイ島のカウー(Kaʻū)にある湧水の名前。直訳すると「烏による水」となる。湧水は、1907年の溶岩流のあとカラスによって見つけられたと伝えられている。 イヴァ ʻIwa(グンカンドリ)の地名 イヴァ(オオグンカンドリ) カイヴァ Kaʻiwa カウアイ島のハナレイ(Hanalei)にある川や、オアフ島のラニカイ(Lanikai)にある尾根の名前。尾根からはオオグンカンドリが飛んでいる姿が頻繁に見られる。「ka」は冠詞で、英語では通常「the」と訳される。 ナーイヴァ Nāʻiwa モロカイ島のカウナカカイ(Kaunakakai)にある地名。「nā」も、「ka」と同じような冠詞だが、結びつく名詞が複数の場合には「nā」が使われる。 ハレイヴァ Haleʻiwa 観光客にも人気がある、オアフ島ノースショアにある町の名前。直訳すると「グンカンドリの家」 イオ ʻIo(タカ)の地名 イオ(ハワイノスリ) プウイオ Puʻuʻio マウイ島にある丘の名前。標高866メートル。直訳すると「鷹丘」。イオは現在ハワイ島にしか生息していないが、化石から昔は他の島にも住んでいたことがわかっている。 イオラニ ʻIolani ハワイ王室の宮殿の名前。地名ではないが、有名なので紹介しておく。ラニ(lani)には「王室の」とか「高貴な」などの意味がある。宮殿については他のたくさんのウェブサイトやガイドブックに詳しく書いてあるので、興味がある方はそれらを参考にしてほしい。 ウアウ ʻUaʻu(ミズナギドリ)の地名 ウアウ・カニ(オナガミズナギドリ) プウウアウ Puʻuʻuaʻu オアフ島のアイエアにある丘の名前。標高505m。直訳すると「ミズナギドリ丘」 ウーリリ ʻŪlili(メリケンキアシシギ)の地名 ウーリリ(メリケンキアシシギ) ナイアカウーリリ Naʻiakaʻūlili ニイハウ島にある湧水の名前。「ウーリリが探した」という意味。この湧水がウーリリよって発見されたという言い伝えに由来するそうだ。 オーマオ Ōmaʻo(ツグミ)の地名 オーマオ(ハワイツグミ) オーマオピオ Ōmaʻopio マウイ島のマーケナ(Mākena)にある地名。直訳すると「さえずる鶫」 コアエ Koaʻe(ネッタイチョウ)の地名 コアエ・ケア(シラオネッタイチョウ) コアエ Koaʻe ハワイ島のマクウ(Makuʻu)にある地名。 コアエケア Koaʻekea マウイ島ハーナ(Hāna)にある地名。ハワイ島ハーマークア(Hāmākua)にある崖の名前にもある。コアエケアとは、シラオネッタイチョウのこと。ケア(kea)は白という意味。その名の通り、尾羽が白い。尾羽が赤いアカオネッタイチョウもいるが、こちらはコアエウラと呼ばれる。ウラ(ʻula)は赤という意味。 パリコアエ Palikoaʻe ニイハウ島の北東部にある地名。直訳すると「ネッタイチョウ崖」 プウコアエ Puʻukoaʻe モロカイ島、マウイ島、ハワイ島にそれぞれある丘や、カホオラヴェ島の南にある小島の名前。直訳すると「ネッタイチョウ丘」 レレコアエ Lelekoaʻe モロカイ島北部の地名。直訳すると「ネッタイチョウの戦い」 コーレア Kōlea(チドリ)の地名 コーレア(ムナグロ) アカニコーレア Akanikōlea ハワイ島のキーラウエア・クレーター(Kīlauea Crater)近くにある地名。直訳すると「千鳥鳴き」 コーレアリイリイ Kōlealiʻiliʻi オアフ島のワイアナエ・バレー(Waiʻanae Valley)にある丘の名前。標高382メートル。直訳すると「小千鳥」 パパコーレア Papakōlea ハワイ島南部、アメリカ合衆国最南端のサウス・ポイント(Ka Lae)近くにある浜。グリーンサンドビーチとも呼ばれる。世界に4箇所しかないという珍しい緑色の砂で有名。また、オアフ島ホノルルのパウオア(Pauoa)にある、ネイティブハワイアンの住居コミュニティの名前としても知られる。直訳すると「千鳥平地」 コロア...

ハワイの地名:manu(鳥)がつく地名

ネーネー(ハワイガン)
ハワイの古い地名 鳥たちが古くより人との関わりが深いのは、日本もハワイも同じである。 日本には「鳥」がつく地名や、ツル、タカ、カモ、ウ、ハト、スズメなどの鳥に関連すると考えられる地名が数えきれないほどある。同じようにハワイの地名にも——山、谷、川、湾、滝などの名称も含めて——やはり鳥の名前がたくさん出てくる。 日本の場合、漢字が当て字であったり、縁起のよい字や雅びた字に変えられていたりして、たとえ地名に鳥の名前が入っていても、それが必ずしも鳥に由来するわけではない。鳥にちなんだものに限らず、日本の古い地名の由来の多くは、すでに歴史の彼方に消えてしまったといえるだろう。 一方、太平洋の真ん中に浮かぶハワイ諸島の古い地名は、他言語の影響を受けていないうえ、ハワイ語が音声学的に単純な言語であることもあり、ある程度は由来がわかっている。ハワイで暮らす人々の間では、地名の意味や由来が比較的よく認知されている。 そんなハワイで、鳥に関連する地名にはどういうものがあるだろうか。まずは、ずばり「鳥」がつく地名を探してみる。鳥はハワイ語で「manu」という。 アーフイマヌ ʻĀhuimanu オアフ島カーネオヘ(Kāneʻohe)にある住宅地の名前。近くには平等院がある。直訳すると「鳥群」。近くにその名も「鳥島」のモクマヌ(Mokumanu)という小島があることからもわかるように、今日でもカツオドリなどの海鳥が多く生息する地域である。ちなみに、この町の通りの多くは、フイ・イオ(Hui ʻIo)、フイ・イヴァ(Hui ʻIwa)、フイ・ウーリリ(Hui ʻŪlili)、フイ・アキキキ(Hui ʻAkikiki)、フイ・アーケパ(Hui ʻĀkepa)のように、Hui(群れ)+鳥の名前が付けられている。 アーリアマヌ Āliamanu ホノルル市の西側にあるソルトレイク界隈の別名で、もともとは近くにあるクレーター(Āliamanu Crater)の名前。アーリア(ālia)には「塩で覆われた場所」や「塩辛い」などの意味がある。火山の女神ペレ(Pele)が、家族とともにこの地で暮らしていたことがあると伝えられている。伝承では、彼女らがこの地を離れるときに、ペレの妹のヒイアカ(Hiʻiaka)が飼っていた鳥が逃げ出し、他の鳥たちが集まってきたという。 カホールアマヌ Kahōluamanu カウアイ島ワイメア・バレーの最も高い崖の名前。「カ(ka)」は冠詞で、英語では通常「the」と訳される。「ホールア(hōlua)」とは、ハワイの伝統的なソリを使ったソリ遊びのこと。名前の由来が気になる。 ハレマヌ Halemanu カウアイ島のハレマヌ・ストリーム(Halemanu Stream)という川の名前。「ハレ(hale)」は家という意味。日本風の名前にするなら「鳥ノ巣川」といったところか。いかにも鳥たちが元気にさえずる川辺の風景を彷彿する。しかし、私は実際にこの川を何度かトレッキングで渡ったことがあるが、鳥の気配すら感じたことがない。カウアイ島の森の野鳥は、特に2010年頃から急速に減少しているように思うが、昔はこの渓流一帯にもエレパイオやハワイミツスイたちがたくさんすんでいたのだろう。カウアイ島の森に再び鳥たちが戻ってくる日は来るのだろうか。 マヌアヒ Manuahi ハワイ島コナのカウープーレフ(Kaʻūpūlehu)の古い地名や、カウアイ島の谷と川の名前、さらにモロカイ島北部の尾根の名前にもある。「アヒ(ahi)」は火という意味。ハワイの火の鳥伝説といえば、人間に火をもたらしたといわれるアラエ・ウラ(バン)があるが、なにか関係あるのだろうか。いつかそれぞれの場所に行って地勢や鳥相を見てみたいものである。 その他の「鳥」がつく地名 カフルオマヌ(Kahuluomanu、直訳「鳥の羽根」)、オアフ島。 カライアカマヌ(Kalaʻiakamanu、直訳「鳥がもたらした平和」)、モロカイ島。 ハアクラマヌ(Haʻakulamanu、直訳「鳥が集まる場所のような」)、ハワイ島。 カマヌ(Kamanu、山の名前。直訳「鳥」)、カウアイ島。 カマヌワイ(Kamanuwai、直訳「水鳥」)、オアフ島。 カヌクオカマヌ(Kanukuokamanu、直訳「鳥のくちばし」)、ハワイ島。 ケアーカマヌ(Keākamanu、丘の名前。直訳「鳥の雑音」)、マウイ島。 ルアマヌ(Luamanu、クレーターの名前。直訳「鳥穴」)、ハワイ島。 マヌホノホノ(Manuhonohono、丘の名前。直訳「臭い鳥」)、カウアイ島。 プウカマヌ(Puʻukamanu、丘の名前。直訳「鳥丘」)、カウアイ島。 プウマヌ(Puʻumanu、丘の名前。直訳「鳥丘」)、カウアイ島、ラーナイ島、ハワイ島。 ワイマヌ(Waimanu、直訳「鳥水」)、ハワイ島、カウアイ島、モロカイ島(滝の名前)。 以上、「鳥」がつく地名を探してみた。 カウアイ島、ラーナイ島、ハワイ島にそれぞれあるプウマヌ(鳥丘)には現在どんな鳥がすんでいるのか、いつの日かそれぞれ訪ねてみたいものだ。カライアカマヌ(鳥がもたらした平和)や、ケアーカマヌ(鳥の雑音)などは、なにかの伝承にもとづいた名前なのだろうか。由来が気になる。 ネーネー、アラエ、イヴァなどの鳥名がつく地名は、次の記事で紹介したい。 写真は筆者による撮影 参考文献 Mary Kawena Pukui, Samuel H. Elbert『Hawaiian Dictionary (Revised and enlarged edition)』University of Hawaiʻi Press(1986年)Mary Kawena Pukui, Samuel H. Elbert, Esther T. Mookini『Place Names of Hawaii (Revised and expanded edition)』University of Hawaiʻi Press(1974年)

ハワイでハイキング:オアフ島最高峰カアラ登山

カアラ山頂からみたノースショア方面
目立たない最高峰 私が住んでいるオアフ島で一番高い山は、島の西側のワイアナエ山脈にある、カアラ(Kaʻala)という山である。高さは1,225メートル。山容は、頂が平らになった台形をしていて、あまり目立たない。ホノルルからもよく見えるが、あの山がオアフ島の最高峰であることを知っている人は少ない。 カアラ登山 カアラ山には、過去に二度登ったことがある。山頂まで登る道はいくつかあるようだが、私は二度とも島のリーワード側から登った。入り口は、ワイアナエという町からしばらく山側にはいったところにある。 登山口からしばらくは塗装されたゆるやかな登り道だが、やがて塗装道路が終わり尾根道になる。尾根道がおわると、あとは急な斜面をひたすら登ってゆく。特に景色も見られず、単調な登山だ。 我慢してしばらく登るとコア、オーヒア、マイレなどの在来植物があわられはじめ、やがてカマイレウヌ(Kamaileʻunu)という尾根の頂上にでる。尾根の上から見下ろす、ワイアナエ・バレーの景色が素晴らしい。 ここからさらに登りは続く。ちょっと恐ろしいくらいの巨大な岩をよじ上る場所もある。設置してある補助用のロープを使いながら登る。 斜面を登りきると、道は急に平坦になる。この山を遠くから眺めたときに平らに見える頂上部分だ。この平坦な場所は湿原(ボグ)になっていて、カアラ自然保護地区(Kaʻala Natural Area Reserve)に指定されている。ここからは、ハイカーが自然環境を壊さずかつ安全に歩けるように敷かれた板の歩道をゆく。ピロやオーラパなど、ハワイ原産の植物がたくさんみられた。 ピロ(カアラ山頂) オアフ島では生息数がさほど多くないアパパネ(アカハワイミツスイ)が、木々の間を飛んでゆく。さえずりも聞こえてくる。まるでカウアイ島のコーケエ州立公園にでもやってきたかのような気分になった。 湿原が終わると板の歩道もなくなり、少し進むと「End of Hiking Trail」という看板がある。近くに島の北側を見渡せる景色の良い場所があるのでそこで弁当を食べた。 アパパネ(アカハワイミツスイ) 帰りは、来た道をひたすら下っていく。往復距離13キロ、高低差1,000メートル、往復8時間のハイキングだ。オアフ島のハイキングコースでは中~上級者向けのコースに入るだろう。しばらく行っていないので近いうちに3度目のカアラ登山を試みたいと思っている。 カアラに住む女神カイオナ カアラ山には、カイオナという慈悲深い女神が住んでいると云われている。山で道に迷った人がいると、カイオナの使いであるイヴァ(オオグンカンドリ)が道案内をして助けてくれるという。私は2回とも道に迷わなかったからなのか、イヴァの姿は見られなかった。 写真はすべて筆者による撮影 ※この記事は、筆者の主観に基づいたハイキング日記であり、読者の皆様を安全なハイキングへと導くトレイルガイドではありません。この記事を参考にして実際にトレイルに行かれる場合は、必ず「ハワイでハイキング:はじめに」をお読みください。

マヌオクー・フェスティバル

紙で作られたマヌオクー(シロアジサシ)
天空の妖精を愛でるお祭り 今年で2回目となる『マヌオクー・フェスティバル(Manu-o-Kū Festival)』が、2017年5月20日土曜日の午前11時から午後3時まで、イオラニ宮殿の敷地内で開催された。去年の第1回イベントには予定が合わず行けなかったが、今年は行くことができた。 このイベントの主役であるマヌオクーとは、ホノルル市内に生息するシロアジサシのハワイ語名で、私が特に好きな鳥のひとつである。真っ白な海鳥で、2007年より『ホノルル市の鳥』に指定されている。 英語ではWhite Tern(白いアジサシ)と呼ばれるほか、「妖精のようなアジサシ」という意味のFairy Ternという名前もある。顔や仕草がとても愛らしく、飛翔する姿は軽やかかつ優雅で、まさに妖精の名にふさわしい。 マヌオクーのペア 不思議なことに、マヌオクーは、ハワイの主要な島々ではオアフ島の都市部にのみ生息する。繁殖地は、わずかな例外を除いては、西はアロハ・タワーから東はニウ・バレーあたりまでの狭い地域に限られている。しかもどういうわけか、ダウンタウン、ワイキキ、アラモアナなどの、人の活動で特に賑やかな街に集中している。 関連記事 マヌオクー(シロアジサシ) アヌヘア:ハワイの花・植物・野鳥図鑑 マヌオクー・フェスティバル そんな愛すべきマヌオクーについてより多くの人々、特に子供たちに知ってもらうために、2016年5月14日に第1回『マヌオクー・フェスティバル』が開かれ、今年は2回目の開催となった。開催しているのはConservation Council for Hawaiʻiという非営利団体で、他に多くの団体、機関、企業がパートナーやスポンサーとして参加している。入場は無料。 会場であるイオラニ宮殿の敷地内には、大きなテントがたてられ、その中で子供向けのゲームや工作、デジタル写真展、マヌオクーをはじめとしたハワイの野鳥について学べるブースなどが、所狭しと並んでいた。会場は家族連れで賑わっていて、子供たちが熱心に紙工作でマヌオクーを作ったり、ゲームを楽しんだりしていた。 マヌオクーのお面 海鳥について学習できるブース デジタル写真展では、複数の写真家たちによるマヌオクーの写真のスライドショーが、モニターで展示されていた。私も、この写真展の担当のかたとご縁があり、僭越ながら10枚ほどの写真を提出させていただいた。 私も参加させていただいたデジタル写真展 望遠鏡でマヌオクーを実際に観察 テントの真横に立っている大きなククイの木では、奇しくもマヌオクーが子育てをしている最中であった。木の下には、そのヒナにスポットをあてた望遠鏡が2台設置されていて、皆とても興味深そうに望遠鏡を覗いていた。また空を見上げると、数羽のマヌオクーが飛び回っていた。 イオラニ宮殿とその周辺のダウンタウンには、マヌオクーの繁殖地がたくさんある。当フェスティバルのイベントの一つとして、これらの繁殖地を歩いて回るツアーも行われたようである。 営巣中のマヌオクーを観察できる望遠鏡 マヌオクーが800万ドルの工事を延期に ダウンタウンのマヌオクーといえば、今年3月、ハワイ州立美術館のバルコニーでマヌオクーが抱卵していることがニュースになった。なぜなら、美術館がある建物では予算800万ドルをかけた大規模なメンテナンス工事が予定されていたが、このマヌオクーのヒナが巣立つまで、工事が延期になったからである。 マヌオクーの親子 マヌオクーに危害を加えたり、卵やヒナを動かしたりして子育ての邪魔をすることは、州と国の法律で禁止されている。 メンテナンス業者にとってはせっかくの仕事が延期になってしまって歯がゆいことかもしれないが、私は、このように自然や野生動物を守ることに重きをおくハワイが、あらためて好きになった。 マヌオクーの家族 写真はすべて筆者による撮影

ハワイでハイキング:プウ・ピア(オアフ島)

プウ・ピア・トレイル(ホノルル市)
マーノアの小さな丘 東京からハワイに遊びに来ていた友人を連れて、マーノア・バレー(Mānoa Valley)の奥に小高く盛りあがった、プウ・ピア(Puʻu Pia)という小さな丘に登った。 ハワイ語でプウ(puʻu)は、丘という意味。ピア(pia)は、タシロイモというヤマノイモの一種のこと(学名:Tacca leontopetaloides)。ピアは、古代ポリネシア人がハワイに持ち込んだ有用植物のひとつで、ハワイの伝統的なプディング、ハウピアの材料として知られる。つまりプウ・ピアは「タシロイモ丘」という意味である。昔はこの丘にタシロイモがたくさん生えていたのだろうか。 トレイル概要 名前Puʻu Pia場所オアフ島ホノルル(Honolulu)。McCully Shopping Centerから約6km駐車場路上駐車トイレなし高低差約150m距離往復約3.2km時間2~3時間(トレイル入口まで行く時間は除く。筆者は頻繁に長い時間立ち止まって写真を撮ることが多いので、あくまでも目安) トレイル入口までの行き方 地図 車で行く場合(McCully Shopping Centerから) Kapiʻolani Blvd.を東(ダイヤモンドヘッド方面)に進む。University Ave.を左折。S King St.との交差点を直進。H1フリーウェイの下を通りすぎる。ハワイ大学を右手に通りすぎる。Oʻahu Ave.を道なりに右折(曲がり角はゆるやかで信号機はない)。すぐにE Mānoa Rd.を右折(信号機あり)。Mānoa Marketplaceを右手に通りすぎる。Akāka Pl.とのY字路を右(E Mānoa Rd.)に進む。Alani Dr.を左折。道が右に直角にカーブしWoodlawn Dr.になる付近に路上駐車する。 バスで行く場合(アラモアナセンターから) マーノア方面行きの6番バスに乗り、Alani Dr.で下車。バス停番号:783。バス停からトレイルの入り口はすぐ近い。 ハイキング開始 プウ・ピア・トレイル入口付近 11時30分にハイキングをスタートした。曇り時々雨。 Woodlawn Dr.の右カーブの手前に、Nā Ala Heleの茶色に黄色い文字の標識がある。Nā Ala Heleは、ハワイ州のトレイルを管理している組織だ。ここから先のAlani Dr.は1車線になり、私道のような雰囲気だが、ここを通り終点まで進む。最後の民家をすぎると、トレイルの入り口がある。 舗装道路が終わると、砂利道になり、やがて土の地面になる。すぐに標識があり、右に曲がる広いトレイルがある。このトレイルはコロワル・トレイル(Kolowalu Trail)といい、ワアヒラ・リッジ(Waʻahila Ridge)へと登る道である。我々はプウ・ピアに登るので、まっすぐ進む。 暗い森の中で、1羽のアカハラシキチョウが出迎えてくれた。トレイルまで出てきたので間近で見ることができた。この日観察できた野鳥は、この1羽だけだった。長い尾を持つアジア原産の鳴禽で、黒い体にオレンジ色の腹が目立つ。さえずりがとても美しい。 関連記事 アカハラシキチョウ アヌヘア:ハワイの花・植物・野鳥図鑑 マーノアは今日も雨だった 木の根と岩がむきでた道は、緩やかな上り坂。やがて雨が降ってきた。前回このトレイルに来たときも雨だった。マーノアは雨が多い。ここでのハイキングは、いつもある程度の雨は想定しておかなければならない。雨具はマストアイテムだ。たとえハイキング時に晴れていても、地面はぬかるんでいたり水たまりがあることが多い。 プウ・ピアの頂上からの眺め 頂上に近づくにつれ、ストロベリーグアバが目立ち始める。40分ほどで頂上に到着した。頂上には、背もたれのない細いベンチがひとつ設置してある。手前の木々が生い茂っていて景色はあまり見えないが、靴を脱いでベンチの上に立てば、マーノアバレー、その奥にワイキキのビル群、そして一番奥に海が見えた。幸い、頂上では雨が止み、晴れ間がのぞいた。 マーノア・バレーとコアの木 マーノアバレーの奥側の景色は、ここより少し手前の開けた場所のほうがよく見える。手前にはコアの木が生えている。マウンテン・ナウパカもみられたが、花は咲いていなかった。どちらとも、ハワイにしか生息していない固有種だ。耳をすますと、マーノア・バレーの奥のほうで滝が落ちる音が聞こえる。これは、ハイキングコースとして家族連れにも人気があるマーノア・フォールズ(Mānoa Falls)の滝の音と思われる。 関連記事 コア アヌヘア:ハワイの花・植物・野鳥図鑑 関連記事 マウンテン・ナウパカ アヌヘア:ハワイの花・植物・野鳥図鑑 帰りは来た道を下るが、また雨が降り出した。今度は本降りだ。特に下り道は滑りやすいので、足元に注意しながら下った。ハイキング後、アロハタワー・マーケットプレイスのゴードン・ビアッシュ(Gordon Biersch)で遅めのランチをとった。マーノアからほんの数キロしか離れていないにもかかわらず、アロハタワーやワイキキは、いつものように快晴だった。ついさっきまでマーノアで雨でずぶ濡れになっていたのが嘘のようだった。 写真はすべて筆者による撮影 ※この記事は、筆者の主観に基づいたハイキング日記であり、読者の皆様を安全なハイキングへと導くトレイルガイドではありません。この記事を参考にして実際にトレイルに行かれる場合は、必ず「ハワイでハイキング:はじめに」をお読みください。

ハワイの野鳥との出会い

オアフ・アマキヒ
きっかけは野鳥の映画 子供の頃から、地元熊本の川や湖などの淡水の環境と、そこにすむ魚たちがとにかく好きで、フナ、コイ、ハエ(オイカワ)、ハヤ(ウグイ)などの魚釣りに夢中だった。また、絵を描くことも同じくらい好きだったので、図鑑をみながらヤマメ、イワナ、アユ、タナゴなどの日本の川魚の絵を無数に描いた。大学生になり自分の運転で遠出できるようになってからは、特に緑川水系と菊池川水系の川や湖に魚釣りに出かけた。野鳥には、特に関心はなかった。 大学を卒業後、ハワイに移住した。ハワイではどういうわけか川魚や、川辺の環境に惹かれなかった。あれだけ好きだった魚釣りも、ハワイでは一度もやったことがないし、やりたいと思ったこともない。 ハワイ暮らしが始まって1年くらい経ったある日、友人に誘われて4人で映画を観に行った。世界のいろんな渡り鳥の長い旅を追いかけるドキュメンタリー映画だった。映画のなかの鳥たちの美しさに感動した私は、すぐに書店に行ってハワイの鳥図鑑を買った。 図鑑をみて、ハワイには思った以上にたくさんの種類の野鳥が生息していることを知った。それらの野鳥の多くが、地球上でハワイにしか生息していない固有種で、しかもそれらの多くがすでに絶滅したか、絶滅の危機に瀕していることも知った。 なかでも、森の野鳥たち、とくにハワイミツスイ類の美しさに魅了された。普通にホノルルの街中で暮らしていたら、まず見かけることはない鳥ばかりだ。いつの日かこの図鑑に載っているような美しいハワイミツスイをこの目で見てみたいという、憧れのような思いを抱くようになった。 野鳥に興味を持ちはじめると、ホノルルの町中の身近な場所にも、ハワイならではの鳥がいくつかいることがわかるようになった。マヌオクーという真っ白なアジサシは、ハワイではホノルルの都市部のみで見られる在来種で、その可愛い顔に一目惚れした。8月にはコーレア(ムナグロ)などの渡り鳥が北から遠路はるばるやってきてハワイで越冬し、4月に再び北に向かって旅立つまで観察するのが毎年の楽しみになった。このマヌオクーとコーレアを中心に、写真も撮るようになった。 くるりとした目が可愛らしいマヌオクー(シロアジサシ) ハワイの代表的な冬鳥コーレア(ムナグロ) ハワイミツスイとの出会い そしてついに、それまで “図鑑の中でだけ会える鳥” だった、ハワイミツスイに出会う日がやってきた。 ワアヒラ・リッジよりホノルル市内を望む 野鳥と同時にハワイの花や木にも興味を持つようになった私は、ある週末、植物の写真を撮るために、コオラウ山脈にあるワアヒラ・リッジという尾根に出かけた。尾根で花や木の写真を撮りながら、ふと10メートルくらい離れた木の枝をみると、緑色の小さな鳥がとまっていた。この尾根にたくさんいるメジロに似ているが、図鑑で何度も何度も眺めた、下にカーブしたくちばしが肉眼で確認できた。 間違いない、ハワイミツスイだ! 私は息を潜め、固唾を飲んで写真を撮った。緊張している私をよそに、鳥は私の存在をあまり気にしている様子はなく、その枝にしばらくいて、やがて飛び去った。 帰宅してさっそく撮った写真と図鑑を照らし合わせた。鳥は、確かにハワイミツスイ類の一種で、アマキヒという名前だった。アマキヒは、オアフ島以外の島にも生息しているが、例えばカウアイ島の個体群はカウアイ・アマキヒ、ハワイ島のものはハワイ・アマキヒと呼ばれ、それぞれが島単位での固有種である。私が出会ったのはオアフ・アマキヒで、オアフ島の固有種だ。また別の日には、同じ尾根で、アパパネという赤いハワイミツスイにも出会うことができた。 オアフ・アマキヒ(コオラウ山中で撮影) 自分が暮らしている小さな島、そしてワイキキという世界有数のリゾート地がある観光の島オアフの、しかも街の喧騒から車で20~30分程度しか離れていない場所で、ちょっと山に入れば古来からいる美しい森の鳥たちがくらしていることに深く感動した。以降、ハワイの野鳥と、野鳥たちを育むハワイの自然の魅力にさらにどっぷりとはまっていった。 写真はすべて筆者による撮影