ハワイの自然・生き物

月別・季節別にみるハワイの花と歳事記

ゴールドツリー
はじめに 日本在住の方から「今度ハワイに行くときに目当の花が咲いているのかどうかを知りたい」という内容のお便りをいくつかいただいたので、月別・季節別に分けたハワイの花の一覧表を作ることにした。 この表を作るために、私は2018年1月から日々の生活のなかで花の開花時期と咲き具合に特に注意して観察メモをつけ続けてきた。観察は今後も続けていく予定なので、気候の変動によって変化が見られた場合や、ある花は咲かないと思っていた月に開花が観察された場合などには、随時更新していく。 表は、本やネットから得た情報ではなく、私自身の年間を通した観察に基づいて作ったものなので、当然、私が普段暮らしているホノルル市内、特にカイムキ地区やカハラ地区での観察記録が多い。そのため、たとえホノルルでも他の地域とは多少の差異があるかもしれない。あくまでも参考程度にしていただきたい。 ホノルル以外では、オアフ島ワヒアワのカンヒザクラと、マウイ島クラのジャカランダの2種は、特に知りたい方が多いと予想されるので例外的に追加した。 ホノルル市内でも山間部に入ればオーヒア・レフア、コア、マウンテン・ナウパカなどの固有種の花も見られるが、年間を通した開花のデータを得ていないので表には入れていない。 このページに記した植物の解説は省略する。それぞれの花について詳しく知りたい方は、私が公開している姉妹サイト『アヌヘア:ハワイの花・植物・野鳥図鑑』や、近藤純夫さんの著書『ハワイアン・ガーデン 楽園ハワイの植物図鑑』などをご覧いただきたい。 表の記号の見方 たくさん咲いている◎咲いている○少し咲いている、あるいはその月の一部期間のみ咲いている△咲いていない×データ不足? 春の花(3月・4月・5月) プルメリア(グローブ・ファーム) ジャカランダ(シウンボク) ハワイでも春は花の季節。ハワイの都市部で春の訪れを告げる花といえば、やはりプルメリアだろう。冬に全く花をつけないわけではないが、暖かくなると花が増え始め、4月頃には町はふくよかな香りに包まれるようになり、春爛漫を感じさせる。 マウイ島のクラ、プカラニ、オリンダやハワイ島のコハラなどにはたくさんのジャカランダ(シウンボク)が植えられており、春に美しい紫色の花をつける。 森では、コア、マーマネ、アーカラなど多くの固有種たちが春に花のピークを迎える。 3月4月5月オクトパスツリー(ハナフカキ)○○○カンヒザクラ(オアフ島ワヒアワ)×××ゴールドツリー◎◎○ジャカランダ(マウイ島クラ)○○◎シャワーツリー(ゴールデン)×△○シャワーツリー(ピンクアンドホワイト)△△○シャワーツリー(ピンク)×◎○シャワーツリー(レインボー)△△○ハラ???ピーカケ○○○ピタヤ××△プルメリア(オブツサ種)○○○プルメリア(ルブラ種)○◎◎ホウオウボク(ロイヤル・ポインシアナ)△○○ホンコン・オーキッドツリー○○○モンキーポッド△○◎ 夏の花(6月・7月・8月) レインボーシャワー(ウィルヘルミナ・テニー) モンキーポッド ハワイに長く住む人が「ハワイの夏の花といえば?」と聞かれれば、多くがレインボーシャワー、中でも特にウィルヘルミナ・テニーを挙げるだろう。様々なトーンからなるピンク色の花を木いっぱいにつける姿は圧巻である。また、『この木なんの木』で有名なモンキーポッドは、初夏にピンク色の花が満開になる。 6月7月8月オクトパスツリー(ハナフカキ)○◎◎カンヒザクラ(オアフ島ワヒアワ)×××ゴールドツリー○○×ジャカランダ(マウイ島クラ)○××シャワーツリー(ゴールデン)◎○△シャワーツリー(ピンクアンドホワイト)○○△シャワーツリー(ピンク)△××シャワーツリー(レインボー)○◎◎ハラ??△ピーカケ○○○ピタヤ△△△プルメリア(オブツサ種)○○○プルメリア(ルブラ種)○○○ホウオウボク(ロイヤル・ポインシアナ)○○○ホンコン・オーキッドツリー△△△モンキーポッド◎○○ 秋の花(9月・10月・11月) ピタヤ 夏から秋にかけての夜には、「ハワイの月下美人」とも言われるピタヤが1シーズンに数回だけゴージャスで神秘的な花をつける。ホノルルのプナホウ・スクールの生垣が特に有名。 9月10月11月オクトパスツリー(ハナフカキ)◎○○カンヒザクラ(オアフ島ワヒアワ)×××ゴールドツリー×××ジャカランダ(マウイ島クラ)×××シャワーツリー(ゴールデン)△△△シャワーツリー(ピンクアンドホワイト)△△×シャワーツリー(ピンク)×××シャワーツリー(レインボー)○○△ハラ?△△ピーカケ○○○ピタヤ△△△プルメリア(オブツサ種)○○△プルメリア(ルブラ種)○△△ホウオウボク(ロイヤル・ポインシアナ)○○○ホンコン・オーキッドツリー△○○モンキーポッド○○○ 冬の花(12月・1月・2月) カンヒザクラ ホンコン・オーキッドツリー オアフ島の内陸部に位置するワヒアワや、ハワイ島のワイメアでは、日系人によって植えられたカンヒザクラが1月から2月にかけて濃いピンクの花をつけ、町の人たちの目を楽しませる。ワイメアでは1993年より毎年2月に桜祭りも開かれている。また、ラン(オーキッド)に似た紫紅色の美しい花が人気のホンコン・オーキッドツリーも冬に花のピークを迎える。 12月1月2月オクトパスツリー(ハナフカキ)○△△カンヒザクラ(オアフ島ワヒアワ)×△△ゴールドツリー××○ジャカランダ(マウイ島クラ)×××シャワーツリー(ゴールデン)×××シャワーツリー(ピンクアンドホワイト)×××シャワーツリー(ピンク)×××シャワーツリー(レインボー)△△△ハラ△?△ピーカケ△△○ピタヤ×××プルメリア(オブツサ種)△△△プルメリア(ルブラ種)△△△ホウオウボク(ロイヤル・ポインシアナ)△△△ホンコン・オーキッドツリー◎◎◎モンキーポッド△△△ ハワイで一年中見られる花 ビーチ・ナウパカ レッドジンジャー 以下にリストした植物は、私が2018年から観察しているかぎり、時期による大きな変化なく一年を通して花をつけるようなので、表には入れていない。どの時期にハワイを訪れてもこれらの花は見ることができるだろう。 アサヒカズラ(メキシカン・クリーパー)アンスリウムイリマオオゴチョウカエンボク(アフリカン・チューリップツリー)キアヴェククイクラウンフラワーコア・ハオレゴクラクチョウカタビビトノキティアレハイビスカスハウ(オオハマボウ)ビーチ・ナウパカプア・ケニケニブーゲンビリアミロ(サキシマハマボウ)レッドジンジャー

ハワイの蝶:カメハメハ・バタフライとコア・バタフライ

コア・バタフライ
2種の固有種 色とりどりの花が一年中咲いているハワイの公園や庭では、たくさんの蝶をみることができる。これらの蝶のほとんどは、他の地域から人間によってハワイに持ち込まれた外来種で、もとからハワイにすんでいる蝶は、実はわずか2種類しかいない。 ひとつは、タテハチョウ科のカメハメハ・バタフライ(Kamehameha butterfly、学名:Vanessa tameamea)、もうひとつはシジミチョウ科のコア・バタフライ(koa butterfly、学名:Udara blackburnii)である。2種とも、ハワイ諸島のみに生息する固有種だ。 世界に20,000種近い蝶がいるといわれるなかで、ハワイ原産の蝶がたった2種類というのは、少ないように思える。これはまず、地球上のあらゆる大陸から遠く離れているハワイ諸島は、蝶にとってたどり着くにはあまりにも遠すぎるということだろう。また蝶は、幼虫が食べるための草(食草)や木(食樹)が種によって限定されている場合が多い。つまり、運良くハワイまでたどり着いた蝶がいたとしても、その蝶に適した食草や食樹がハワイに存在しなければ、定着できないことになる。 カメハメハ・バタフライ カメハメハ・バタフライ | 写真:Forest & Kim Starr ハワイ諸島を統一したカメハメハ1世に敬意を表して名付けられた蝶。羽を広げた時の長さは5.5~7.5センチ。羽は濃いオレンジ色、羽の縁は黒色で、いくつかの斑紋がある。カホオラヴェ島以外のハワイの主要8島で生息が確認されている。山地のハイキングトレイルや森の開けた場所などでみることができる。主にマーマキ(māmaki、学名:Pipturus albidus)というイラクサ科の低木または小高木に産卵し、幼虫はマーマキの葉を食べて育つ。ハワイ語で蝶や蛾のことをpulelehuaというが、これは特にカメハメハ・バタフライのことを指しているようだ。 コア・バタフライ 緑色の小さな蝶。羽を広げた時の長さは2.2~2.9センチ。オスの前羽の根元付近は青みがかっている。後羽はやや青みが少ない。メスの羽の表側は灰色がかった茶色。羽の表側はオスもメスも玉虫のような緑色で、メスの方が明るい。ハワイの蝶で羽の表側が緑色なのはコア・バタフライだけである。その名の通り、主にコア(koa、学名:Acacia koa)の木に産卵し、幼虫は花を食べて育つ。他にアアリイ(ʻaʻaliʻi、学名:Dodonaea viscosa)などにも産卵することがわかっている。カメハメハ・バタフライ同様、カホオラヴェ島以外のハワイの主要8島で生息が確認されている。コアの木が生えている山地で見られるが、昔よりは数が減っているらしい。 以上の2種は、それぞれの祖先がいつの時代か偶然ハワイにたどり着き、運良く適切な食樹があったため定着に成功し、ハワイの環境に合わせて独自な進化を遂げた蝶たちだ。町中や海辺で見られることはほぼないので、ハワイで山にハイキングに出かけるチャンスがあれば、ぜひこれらの美しい蝶たちを探してみてほしい。 参考文献 Dean Jamieson, Jim Denny『Hawaiʻi’s Butterflies & Moths』Mutual Publishing(2001年)

ハワイの蝶:モナークチョウ(オオカバマダラ)

オオゴチョウの花の蜜を吸うモナークチョウ
有名な渡り蝶 ハワイの町のあちこちでオレンジ色の美しいモナークチョウがひらひらと飛んでいる姿を見ることができる。タテハチョウ科に属する中型の蝶で、オオカバマダラ、王様蝶とも呼ばれる。英語名はmonarch butterflyといい、北アメリカでは最もよく知られる蝶のひとつである。学名はDanaus plexippus。レペレペ・オ・ヒナ(lepelepe-o-Hina)というハワイ語名があるが、固有種のカメハメハ・バタフライ(Vanessa tameamea)も同じ名で呼ばれる。 アメリカ本土のモナークチョウは、越冬のためにカナダからメキシコまで、3,000キロ以上もの距離を、世代を重ねながら旅する渡り蝶として知られている。しかし、ハワイに生息するモナークチョウは越冬地を探す必要がないため、渡りをすることはめったにないようだ。 ハワイに元からいたわけではなく、1841年から1852年の間に北アメリカからやってきたとされている。自力で太平洋を渡ってきたのか、それとも人間によって持ち込まれたのかは、わかっていないらしい。 特徴 クラウンフラワーの葉にとまるモナークチョウ(ホノルル市内) 羽を広げた時の大きさは10センチくらいである。羽は黒地にオレンジ色の模様があり、縁の付近は黒色で白の斑点がある。ハワイに生息する他の蝶との見分けはつきやすい。幼虫は黄色、クリーム色、黒色の縞模様で、両端にそれぞれ2本の触角のようなものがある。 分布 ハワイの主要8島ではカホオラヴェ島を除いた全ての島での生息が記録されている。 オアフ島とハワイ島には、オレンジの部分が白い、ホワイトモナーク(white monarch)と呼ばれる個体もみられる。ホワイトモナークは世界各地のモナークチョウで稀に見られるそうだが、どういうわけかハワイでは発生率が高いという。またカウアイ島には、茶色の珍しいモナークチョウも生息しているそうだ。 食草 モナークチョウのハワイでの定着は、幼虫の第一の食草であるトウワタ(Asclepias curassavica)のハワイへの移入と関係があるらしい。トウワタがハワイで定着したのちに、モナークチョウが見られるようになったからだ。 モナークチョウの幼虫は、トウワタのほかにクラウンフラワー(アコン、Calotropis gigantea)などのガガイモ科の植物の葉を食べる。トウワタやクラウンフラワーに含まれる独特の乳液状の物質を吸収した幼虫は、鳥にとっては毒なので、鳥はモナークチョウの幼虫を襲わないのだそうだ。 ただし、オアフ島に外来種として定着しているシリアカヒヨドリ(Pycnonotus cafer)とコウラウン(Pycnonotus jocosus)は、モナークチョウの幼虫を食べることができるという。なお、トウワタも以前はガガイモ科に分類されていたが、現在はキョウチクトウ科に分類されている。成虫は、トウワタを含めた様々な花の蜜を吸う。 クラウンフラワーの花(ホノルル市内) クラウンフラワーは花がレイに使われ、ハワイではとても人気がある。民家の庭にもよく植えられているため、ハワイでモナークチョウの幼虫を探すのには最適である。クラウンフラワーの周りにはモナークチョウの成虫の姿もよく見られる。 写真はすべて筆者による撮影 参考文献 Dean Jamieson, Jim Denny『Hawaiʻi’s Butterflies & Moths』Mutual Publishing(2001年)

ハワイ州は虹の州

ワイルペの虹
レインボウ・ステート アメリカ合衆国50番目の州ハワイには、公式なアロハ・ステート(アロハの州)とは別に、レインボウ・ステート(虹の州)という愛称がある。その愛称の通り、ハワイでは頻繁に虹が発生する。朝方や夕方にパラっと軽い雨が降ったあと、すぐ晴れることが多く、こういうときには大抵、きれいな虹がかかる。ホノルルで普通に暮らしていると、多いときでは1週間に3度も4度も虹を見ることも珍しくない。 そういうことから、ハワイは虹にちなんだものがたくさんある。例えば、ヒルトン・ハワイアン・ビレッジには「レインボウ・タワー」と呼ばれる棟があり、その側面の大きな虹の壁画は、ホテルのシンボルとなっている。他にも、ハワイ州の車のナンバープレートには大きく虹が描かれているし、ハワイの主要な銀行のひとつファースト・ハワイアン・バンクのロゴマークも虹だ。ホノルル市が運営するバス「TheBus」の車体にも大きく虹がデザインされている。ハワイ島ヒロにあるの有名な滝に「レインボウ・フォールズ」というのがあり、ホノルルのカパフル通りにある有名なプレートランチの老舗の名は「レインボウ・ドライブ・イン」だ。ハワイで虹がいかになじみの深いものであるかわかるだろう。 ハワイの虹伝説 虹は、ハワイ語ではアーヌエヌエ(ānuenue)という。 ハワイの言い伝えでは、メネフネ(Menehune)という伝説上の小人族が、虹を作ったとされている。メネフネ達は、鳥の羽から赤色を、イリマという花からオレンジ色を、バナナから黄色を、シダの葉から緑を、海水から青を、そして女王のドレスから紫を集めた。それをカフナ(kahuna、祈祷、占い、儀式を司どる専門家)が混ぜ合わせて虹を作り出したという。つまりハワイでは、虹の色はアーチの外側から赤、オレンジ、黄、緑、青、紫の6色とされている。日本では青と紫の間に藍色を加えて7色とするのが一般的だ。 運がよければ「奇跡の虹」も 虹の外側にさらにもうひとつの大きな虹がある「ダブルレインボウ」もハワイでは普通に見られる。外側の虹は、色の並びが逆になるのが特徴。ダブルレインボーのその外側にさらにもう一つ虹があって3重になっている「トリプルレインボウ」が見られることもあるという。トリプルレインボウは「奇跡の虹」と言われるが、私はまだ見たことがない。 夕方のマーノア・バレーに架かるダブルレインボウ 虹のあるくらし 私は「ハワイdeバレーボール」というバレーボールサークルを主催していて、週末の夕方にダイヤモンドヘッドがきれいに見えるカピオラニ公園でバレーボールをやっている。バレーボール中に、ダイヤモンドヘッドをまたぐように大きな虹が出ることが多い。太陽が西に傾くにつれて徐々に色が変わっていくダイヤモンドヘッドと虹のコンビネーションは大変美しい。こんな素敵な環境で毎週バレーボールをできることをいつも幸せに思う。 写真はすべて筆者による撮影

ハワイの野鳥の歴史

アキアポーラーアウ(カワリカマハシハワイミツスイ)
ハワイ在来の鳥たちの祖先 地球上もっとも隔絶した群島であるハワイは、ほとんどの動物にとって、自力で辿り着くにはあまりにも遠い。このことは、ハワイには陸生の爬虫類も両生類も在来種としては存在しないことでもわかる。陸生の哺乳類ではコウモリがいるのみである。ハワイが地理的にいかに隔絶しているかは、『ハワイの花と植物の歴史』の冒頭で書いた。 空を自由に飛ぶことができる鳥たちにとっても、ハワイはあまりにも巨大な海のバリアで囲まれている。ハトも、メジロも、カワセミも、ツバメも、ハワイに到達しておらず、もし到達したとしても、定着できなかった。 そんな絶海の孤島ハワイにも、長旅に適応していたいくつかの鳥類が、長い歴史のどこかでたどり着いて定着することができた。現在生き残っているハワイ在来の鳥類は、海鳥や渡り鳥を除くと、大昔にハワイにたどり着いて定着したわずか13種類の鳥の子孫たちである。ガン、カモ、サギ、バン、オオバン、セイタカシギ、タカ、フクロウ、カラス、カササギヒタキ、ツグミ、フィンチ(マシコ)、ヨシキリの13種である。 アトリ科 Fringillidae 亜種も含めて50以上のハワイミツスイ類(Hawaiian honeycreepers)が知られる。たった1種のフィンチから、生活環境に合わせて嘴、体の色、大きさ、鳴き声、生態が異なる多くの種に分化し、それぞれ独自に進化していったグループである。このような、単一の祖先が多様なニッチ(生態的地位)に適応して起こる種の分化を適応放散(adaptive radiation)という。残念ながら、ハワイミツスイ類の半数以上がすでに絶滅した。 色も形も様々なハワイミツスイ類。左上:アパパネ(アカハワイミツスイ)、右上:マウイ・アラウアヒオ(マウイ・クリーパー)、左下:パリラ(キムネハワイマシコ)、右下:イイヴィ(ベニハワイミツスイ)| 写真:崎津 鮠太郎 ハワイで野鳥に興味を持つと、誰しもが必ずハワイミツスイに行き着くだろう。この宝石のように美しい鳥たちについては、あらためて別の記事を書こうと思っている。 カササギヒタキ科 Monarchidae エレパイオ(ハワイヒタキ、ʻElepaio)が、カウアイ島、オアフ島、ハワイ島にそれぞれ固有種として分布する。 左からカウアイ島、オアフ島、ハワイ島のエレパイオ | 写真:崎津 鮠太郎 カモ科 Anatidae コロア(ハワイマガモ、Koloa)とレイサン・ダックの2種のカモと、1種のガンがいる。ガンは、現在『ハワイ州の鳥』であるネーネー(ハワイガン、Nēnē)。 ネーネー(ハワイガン)| 写真:崎津 鮠太郎 カラス科 Corvidae アララー(ハワイガラス、ʻAlalā)1種が、保護のもとでかろうじて絶滅を免れて生息している。半化石の記録からは、少なくとも他に2種のカラスがハワイ島に生息していたことがわかっているという。 クイナ科 Rallidae 以前は少なくとも6種のクイナ類がいたが、すべて絶滅した。他にはアラエ・ウラ(バン、ʻAlae ʻUla)とアラエ・ケオケオ(オオバン、ʻAlae Keʻokeʻo)がそれぞれ1種ずつ生き残っているが、どちらとも絶滅の危機に瀕している。 左:アラエ・ウラ(バン)、右:アラエ・ケオケオ(ハワイオオバン)| 写真:崎津 鮠太郎 サギ科 Ardeidae アウクウ(ゴイサギ、ʻAukuʻu)が在来種として生息する。ヨーロッパ、アフリカ、アジア、アメリカ大陸に広く分布する。ハワイに生息する鳥のなかで陸生の在来種はほとんどが固有種か固有亜種だが、アウクウはその中では珍しく他の地域にも生息する在来種である。 アウクウ(ゴイサギ)| 写真:崎津 鮠太郎 セイタカシギ科 Recurvirostridae アエオ(クロエリセイタカシギ、ʻAeʻo)が生息する。固有亜種。 アエオ(クロエリセイタカシギ)| 写真:崎津 鮠太郎 タカ科 Accipitridae イオ(ハワイノスリ、ʻIo)がハワイ島に生息する。大昔にはカウアイ島、オアフ島、モロカイ島にも生息していたことが化石からわかっている。 イオ(ハワイノスリ)| 写真:崎津 鮠太郎 ツグミ科 Turdidae 5種のツグミの仲間が知られている。現在生息しているのはオーマオ(ハワイツグミ、ʻŌmaʻo)、とプアイオヒ(Puaiohi)のみ。オーマオはハワイ島固有種。プアイオヒはカウアイ島固有種。 オーマオ(ハワイツグミ)| 写真:崎津 鮠太郎 トキ科 Threskiornithidae 半化石の調査から、大昔には空を飛べないトキの仲間がいたことがわかっている。 フクロウ科 Strigidae プエオ(コミミズク、Pueo)が生息する。固有亜種。 プエオ(コミミズク)| 写真:Forest & Kim Starr ヨシキリ科 Acrocephalidae 北西ハワイ諸島のレイサン島とニホア島のレイサンヨシキリ(Millerbird)が知られる。レイサン島の基亜種(Acrocephalus familiaris familiaris)は、島に移入されたウサギが原因で20世紀の初頭に絶滅した。ニホア島の亜種(Acrocephalus familiaris kingi)も絶滅の危機に瀕している。先祖はアジアから来たヨシキリの仲間とされる。2011年、ニホア島の亜種をレイサン島に数羽放して、レイサン島のレイサンヨシキリを復活させる試みが行われた。最初の年には17羽が巣立ったという。 Mohoidae(日本語の科名なし) ある鳥がハワイに定着後に分化して、Mohoidaeというハワイ固有の科になった。長い間、この「ある鳥」はオーストラリア方面から来たミツスイの仲間だと考えられていたが、近年は、北アメリカから来たレンジャクモドキの仲間だとされている。以下の5種が知られるが、残念ながらすべて絶滅した。 カウアイ・オーオー(キモモミツスイ) Kauaʻi ʻŌʻō(ʻŌʻōʻāʻā) 学名:Moho braccatus カウアイ島固有種・絶滅種 オアフ・オーオー(ワキフサミツスイ) Oʻahu ʻŌʻō 学名:Moho apicalis オアフ島固有種・絶滅種 モロカイ・オーオー/ビショップス・オーオー(ミミフサミツスイ) Molokaʻi ʻŌʻō (Bishop’s ʻŌʻō) 学名:Moho bishopi モロカイ島固有種・絶滅種 ハワイ・オーオー(ムネフサミツスイ) Hawaiʻi ʻŌʻō 学名:Moho nobilis ハワイ島固有種・絶滅種 キオエア(クロツラミツスイ) Kioea 学名:Chaetoptila angustipluma ハワイ島固有種・絶滅種 人間の定住後 人間が定住するまでの長い間、ハワイには野鳥にとって天敵も競争者もいなかった。蚊もアリもいなかった。なかには飛ぶ必要さえなくなり、進化の過程で飛ぶ能力を失った鳥も少なくない。しかし、この鳥たちの楽園ハワイは、人間が現れてから一変することになる。 ハワイ最初の定住民であるポリネシア人が、約4~5世紀に南方からハワイにやってきて定住した。鳥たちは人間を恐れなかったため、大量に捕まえられて食料になり、羽が装飾に使われた。 ポリネシア人の定着から、その後ジェームス・クック(Captain James...

ハワイの花と植物の歴史

マオ・ハウ・ヘレ
絶海の孤島ハワイ 太平洋の中央に浮かぶハワイ諸島は、最も近い大陸である北アメリカ大陸から3,800kmも離れている。諸島として最も近いマルキーズ諸島でさえ3,900km離れていて、タヒチ島があるソシエテ諸島からは4,400km、フィジーからは5,100km、東京からは6,200kmも離れている【図1】。ハワイは、群島としては地球上で最も孤立した、まさに絶海の孤島なのである。この隔絶が、ハワイに唯一無二の植物相をもたらした。 【図1】地球上のあらゆる大陸や諸島から孤立しているハワイは、まさに絶海の孤島と呼ぶにふさわしい ハワイの在来植物の先祖たち ハワイの在来植物には、約1,160種の顕花植物(花を咲かせる植物)とシダ植物がある。そのうち、顕花植物の90%、シダ植物の75%がハワイのみに分布する固有種である。この固有種の比率は、世界のどの地域よりも高い。 在来植物のうち顕花植物は約1,000種だが、それらのすべては、数千年前、もしかしたら数百万年前にハワイにたどり着いて定着した約270種の植物から派生したとされている。270という数は、ハワイが地球上で最も隔絶した島々であることを思うと多いように感じるかもしれない。しかし、約500万年に誕生したカウアイ島を例にして大雑把に計算すると、ひとつの植物が定着する頻度は、1万8,500年に一度ということになる。北西ハワイ諸島でもっとも古いクレ環礁の誕生を3,000万年前として計算するならば、なんと約11万年に一度ということになる。人間の時間感覚では、もはや奇跡の270種と言っていいだろう。ハワイにたどり着いたとしても、ほとんどの場合はハワイの気候や環境がその種が生育に適していないために定着できなかったに違いない。 ハワイの在来種の祖先の多くは、インド太平洋からやってきたと考えられている。不思議なことに、ハワイに最も近いアメリカ大陸からやってきたとされる植物は全体の18%でしかない。 運よくハワイにたどり着き、定着することができた約270種が、現在見られるハワイの在来顕花植物に派生し進化した。そのためハワイの植物相は、世界の標準とは少し異なる。ランの仲間は被子植物ではもっとも種の数が多い科であるが、ハワイ在来のラン科の植物はわずか3種しかない。ヤシの仲間は、ハワイ語でロウル(loulu)と呼ばれる、Pritchardia属の固有種群があるのみである。スギやマツなどの針葉樹の仲間はひとつもない。 【図2】ハワイに定着した約270種の植物がハワイに到着した方法の割合 「A Guide to Hawaiʻi’s Costal Plants」(Michael Walther著、2004年)によると、約270種のうち、約1.4%は風によって運ばれ、約22.8%は海を浮遊して漂着したと考えられている【図2】。種子が海流に乗ってハワイに漂着して定着した植物の例として、ウィリウィリ(wiliwili、学名:Erythrina sandwicensis)、ハラ(hala、学名:Pandanus tectorius)、ポーフエフエ(pōhuehue、学名:Ipomoea pes-caprae)などが挙げられる。 左:ハラの幹と気根、右:ポーフエフエの花 残りの75.8%は、鳥によってはるばるハワイまで運ばれてきたと考えられている。ハワイは、多くの渡り鳥の越冬地や中継点である。大陸や他の島の植物の種子が、これらの渡り鳥や、何らかの理由で偶然ハワイにたどり着いた鳥の足の泥に混ざっていたり、羽にくっついたり、あるいは消化管の中に入っていたりして、ハワイに運ばれてきたのである。 ハワイで越冬する渡り鳥のひとつ、ムナグロ ポリネシア人とカヌープラントの到来 左:ノニの実と花、右:ククイの花。どちらもポリネシア人によってハワイに持ち込まれた 長いあいだ在来植物に覆われていた無人の島ハワイだが、人間が住むようになってからその自然相は大きく変わることになる。 ハワイへの最初の定住民であるポリネシア人は、4~5世紀に、南方のマルキーズ諸島やソシエテ諸島からカヌーに乗ってハワイにやってきたと考えられている(年代には諸説ある)。彼らは、衣食住に必要ないくつかの植物をハワイに持ち込んだ。カロ(タロ)、ウル(パンノキ)、ニウ(ココヤシ)、コー(サトウキビ)、ククイ、キー(ティ)などである。これらの有用植物は、カヌーに乗ったポリネシア人によってハワイに持ち込まれたため、カヌープラント(canoe plants)と呼ばれる。どれもハワイの伝統文化を語るには欠かせない植物ばかりであり、ニウやキーのように、今日のハワイの景観を決定づける大きな要素になっている植物も多い。 今日のハワイの風景に欠かせないココヤシ 彼らは農地を開き、彼らが持ち込んだ有用植物を植えた。屋根を葺く材料になるピリの草を育てるために、特にリーワード(貿易風の風下側の地域)の広大な面積の森を焼いた。ブタ、イヌ、ネズミも持ち込まれ、今日まで続く外来種の侵略の始まりとなった。 キャプテン・クックのハワイ到達以降 1778年にジェームス・クック(Captain James Cook、1728–1779)が、記録上は最初のヨーロッパ人としてハワイに到達して以降、ハワイの生態系は劇的に変化した。森の木は次々と切り倒され。ウシ、ウマ、ヤギ、ブタ、シカ、ヒツジなどの有蹄類(ゆうているい。ひづめを持つ哺乳類)が持ち込まれた。ブタは、ポリネシア人がプアア(puaʻa)と呼んでいた小型種がすでに持ち込まれていたが、新たにヨーロッパ産の大型種が持ち込まれた。それらのブタやヤギが野生化して草木を食い荒らし、外来植物の種を広げた。花粉を媒介する鳥や虫がいなくなり、そのため多くの植物も絶滅した。 「Flowers and Plants of Hawaiʻi」(Paul Wood著、2005年)によると、現在ハワイの土地全体の約50%が牧草地であり、約30%が農園と住宅地、残りの約20%が、森や平原などの自然環境であるという。そのわずかな自然環境も、外来の帰化植物に圧倒されていて、在来植物たちは追いやられている。ハワイの在来植物の約40%が、すでに絶滅したか、絶滅の危機に瀕している。アメリカ国内に生息する植物のなかで合衆国によって絶滅危惧種(「Threatened」もしくは「Endangered」)に指定されている種の数は、ハワイ州が最も多い。固有種王国ハワイは、残念ながら、絶滅危惧種の王国でもあるのだ。 左:ナーヌー(Gardenia brighamii)、右:コオロア・ウラ(Abutilon menziesii)。いずれも絶滅の危機に瀕しているハワイ固有種 クックのハワイ到達後の200年で、5,000種以上もの植物が、主にアジアやアメリカの熱帯地域からハワイに移入された。今日、ハワイの道端、庭、郊外の景色を形成する植物のほとんどがこれらの外来種である。ワイキキ(オアフ島)、カイルア・コナ(ハワイ島)、プリンスヴィル(カウアイ島)などのリゾート地に植えられている熱帯植物は、世界各地のトロピカルリゾート地で見られるそれと変わらない。 左:プルメリア、右:ヘリコニア ハワイで人気があるプルメリアも、ピーカケも、シャワーツリーも、ティアレも、ヘリコニアも、ジンジャーも、ブーゲンビリアも、バードオブパラダイスも、リリコイも、モンキーポッドも、すべてこの200余年の間にハワイにやってきた新しい植物たちだ。ハワイは、在来植物のなかの固有種の比率が世界一高いいっぽう、外来植物の数が世界で最も多い場所でもある。 固有種王国であり、絶滅危惧種王国であり、外来種王国でもある——ハワイの植物相がいかに特殊なものであるか、これだけでもわかる。 写真はすべて筆者による撮影

ハワイの爬虫類:まとめと全種リスト

ヒロオヒルヤモリ(ハワイ、オアフ島)
28種の爬虫類 現在、ハワイには28種の爬虫類が生息する。そのうち、ウミヘビ1種とウミガメ5種の計6種の海洋爬虫類は、人間とは関係なく元からハワイに住んでいる在来種である。その他の22種はすべて陸生で、人間によって意図的、または偶然に、ハワイに持ち込まれた外来種である。 ただし、スキンク類とヤモリ類のいくつかは、大昔に何らかの浮遊物に乗って自力でハワイに漂着し、定着した可能性も否定はできないという。もしそうだとしたら、それらはハワイに自然分布する在来種ということになる。そうでない場合は、4~5世紀頃にハワイにやってきたとされる古代ポリネシア人のカヌーに偶然乗り合わせてハワイに上陸したとされている。いずれにせよ、はっきりとしたことはわかっていない。今後の遺伝子分析が待たれているそうだ。 海にすむ爬虫類(6種) ウミガメ科 Cheloniidae アオウミガメ アオウミガメ(ホヌ) 英語名Green Sea Turtle学名Chelonia mydas説明ハワイの海のシンボルであり、ハワイで最も一般的に見られるウミガメ。カメ全般のことをハワイ語ではホヌ(honu)というが、特に本種のことを指す場合が多い。絶滅危惧種。 アカウミガメ アカウミガメ | 写真:Brian Gratwicke 英語名Loggerhead Sea Turtle学名Caretta caretta説明日本周辺の海で生まれたと考えられる個体がまれにハワイに現れるが、ハワイでの産卵は確認されていない。絶滅危惧種。 タイマイ 英語名Pacific Hawksbill Turtle学名Eretmochelys imbricata bissa説明ハワイ語ではホヌエア(honuʻea)と呼ぶ。アオウミガメに次いで多いとはいえ、生息数は極めて少ない。絶滅危惧種。 ヒメウミガメ 英語名Olive Ridley Sea Turtle学名Lepidochelys olivacea説明ハワイのウミガメのなかでは最も小さい。絶滅危惧種。 オサガメ科 Dermochelyidae オサガメ オサガメ | 写真:Alastair Rae 英語名Leatherback Sea Turtle学名Dermochelys coriacea説明体長1.5~2.1m、体重315~630kgと、現生するカメ類のなかで最も大きい。絶滅危惧種。 コブラ科 Elapidae(ウミヘビ亜科 Hydrophiinae) セグロウミヘビ 英語名Yellow-bellied Sea Snake学名Pelamis platura説明広い海域に生息するウミヘビ。ハワイには特にエルニーニョの年に多く現れるという。 陸にすむ爬虫類(22種) アノールトカゲ科 Polychridae グリーンアノール グリーンアノール(カウアイ島ポイプー)| 写真:崎津 鮠太郎 英語名Green Anole学名Anolis carolinensis説明1950年にホノルル市内のカイムキー地区で最初に見つかった。 ナイトアノール 英語名Knight Anole学名Anolis equestris ブラウンアノール ブラウンアノール(雄、ホノルル)| 写真:崎津 鮠太郎 英語名Brown Anole学名Anolis sagrei説明ホノルルの住宅街でもっとも多く見られるトカゲ。雄は雌より大型で、鮮やかなオレンジ色の胸垂を持つ。雌は黄色の斑点もしくは背骨に沿って黒い三角形の模様がある。 イグアナ科 Iguanidae グリーンイグアナ グリーンイグアナ | 写真:Pixabay 英語名Green Iguana学名Iguana iguana説明体長約180cm。ハワイに生息するトカゲ類では最大。全長の2/3は太い尾が占める。木に登り、高さ15mから落下しても平気だという。厳つい顔の割には草食で、葉、花、果実などを主に食べる。原産地では食用になる。中央アメリカや南アメリカからハワイに移入され、不法に放されたようだ。オアフ島のワイマナロで多くの目撃情報があり、繁殖にも成功していると考えられている。 カメレオン科 Chamaeleonidae ジャクソンカメレオン ジャクソンカメレオン(ホノルル)| 写真:崎津 鮠太郎 英語名Jackson’s Chameleon学名Trioceros jacksonii説明体長約60cm。オスには3本の角があり恐竜トリケラトプスを彷彿させる。目を左右別々に動かして、2匹の虫を同時に目で追うことができる。東アフリカ原産。ハワイには、ケニアの最高峰・ケニア山に生息する亜種T....

ハワイモンクアザラシ(ハワイアンモンクシール)

ハワイモンクアザラシ(ハワイアンモンクシール)
熱帯のハワイにアザラシ? ワイキキのカイマナ・ビーチで夕方泳いでいたら、浜辺にアザラシが突然現れた。ハワイに生息する野生のアザラシ、ハワイモンクアザラシ(タイヘイヨウモンクアザラシ)だ。 アザラシといえば、海に流氷が浮いているような寒い地域に棲んでいるというイメージが一般的にあるので、ハワイにアザラシがいるなんて意外に思う人もいるかもしれない。ハワイモンクアザラシは、熱帯のハワイに生息する珍しいアザラシで、世界でハワイ諸島にしか生息していないハワイ固有種である。 ハワイではよく知られている動物で、ビーチや岩場にあがってきて昼寝をしている姿をたまに見ることができる。オアフ島では、自然保護区になっているカエナ・ポイントなどで見られる確立が高い。サーファーが波待ちをしていたら、すぐそばに体長2メートルもあるアザラシが顔を出して驚いたなんて言う話もサーファーの友人から聞いたことがある。 オアフ島最西端のカエナ・ポイントは自然保護区になっていて、ハワイモンクアザラシの姿も見られる 3種のモンクアザラシ 海に棲む哺乳類のなかで四肢がヒレのようになっているアザラシ、アシカ、セイウチなどを、総称して鰭脚類(ひれあしるい/ききゃくるい)という。ハワイモンクアザラシが属するモンクアザラシ属(Monachus)の仲間は、現存する鰭脚類のなかではもっとも古くて原始的なグループだとされている。数百万年前からほとんど姿が変わっていないという。 モンクアザラシ属は、チチュウカイモンクアザラシ(Monachus monachus)、カリブモンクアザラシ(Monachus tropicalis)、そしてハワイモンクアザラシ(Monachus schauinslandi)の3種が知られている。 大西洋や地中海に生息するチチュウカイモンクアザラシは、生息数が500頭以下と極めて少なく、深刻な絶滅の危機に瀕している。カリブモンクアザラシは、その名の通りカリブ地方に生息していたが、1952年を最後に目撃されていない。現在は絶滅したと考えられている。 ハワイモンクアザラシは、チチュウカイモンクアザラシに比べると生息数は多いが、それでも2016年時点での生息数はわずか1,200頭程度であり、こちらも絶滅の危機に瀕している。 名前について 英語ではハワイアン・モンク・シール(Hawaiian monk seal)という。モンク(monk)は、修道士や僧侶のことである。モンクアザラシの首のひだが、修道士が着る修道服のフードに似ていることに由来するそうだ。また、モンクには、ギリシャ語で「一人で暮らす人」という意味もあるといい、モンクアザラシが群れることなく単独でいることが多いことも、名前の由来になっているらしい。シール(seal)は、アザラシのことである。 ハワイ語ではイーリオホロイカウアウア(ʻīlioholoikauaua)という。直訳すると「荒海を駆ける犬」という意味である。 不思議なことに、古代ハワイのチャントや伝承にアザラシは出てこない。だからといって、古代ハワイ人が、アザラシのように大きな動物の存在に気付かなかったとは考えにくい。つまり、ポリネシア人がハワイにやってきて定住してから長い間、アザラシはハワイに棲んでいなかったと思われる。ウミガメを指すホヌ(honu)や、マグロを指すアヒ(ʻahi)などと比べても、イーリオホロイカウアウアというハワイ語名は明らかにやや説明的で、ハワイ人が日常生活のなかでよく使っていた言葉ではないことがわかる。 特徴と生態 体長は2メートル以上、体重は200キロ以上になる。体は銀色がかった灰色。生まれたばかりの子供は全身黒色。野生の状態での寿命は約30年と言われている。 ハワイモンクアザラシの親子(2017年7月、カイマナ・ビーチにて撮影) 潜水能力が高く、海中を自由に素早く泳ぐことができる。深さ200メートル以上潜った記録もあるという。食餌は主に夜に行い、エビ、タコ、魚などを食べる。天敵はサメ、特にイタチザメだが、小型のサメは逆に捕まえて食べることもある。 昼間はビーチなどでぐったりと寝ていることが多い。その姿があまりにも無気力にみえるため、病気ではないかと心配する人も多い。病気ではなく、夜の狩りのためにたっぷりと休憩しているだけなので、むやみに近づいたり邪魔をしたりすべきではない。ハワイモンクアザラシに危害を加えることは、法律でも禁止されている。 カイマナ・ビーチにあがってきたハワイモンクアザラシの背中には、個体の行動を調査するためのトランスミッターが装着されていた。もちろん、ハワイモンクアザラシの生態を調べ、絶滅から守るためのものであろうが、背中にあのような大きい装置を付けられてストレスにならないのだろうか。今の時代、もっと小型のICチップのようなものにならないものかと、素人の私は思った。 写真はすべて筆者による撮影 参考文献 Patrick Ching『The Hawaiian Monk Seal』University of Hawaiʻi Press(1994年)

ハワイの野鳥との出会い

オアフ・アマキヒ
きっかけは野鳥の映画 子供の頃から、地元熊本の川や湖などの淡水の環境と、そこにすむ魚たちがとにかく好きで、フナ、コイ、ハエ(オイカワ)、ハヤ(ウグイ)などの魚釣りに夢中だった。また、絵を描くことも同じくらい好きだったので、図鑑をみながらヤマメ、イワナ、アユ、タナゴなどの日本の川魚の絵を無数に描いた。大学生になり自分の運転で遠出できるようになってからは、特に緑川水系と菊池川水系の川や湖に魚釣りに出かけた。野鳥には、特に関心はなかった。 大学を卒業後、ハワイに移住した。ハワイではどういうわけか川魚や、川辺の環境に惹かれなかった。あれだけ好きだった魚釣りも、ハワイでは一度もやったことがないし、やりたいと思ったこともない。 ハワイ暮らしが始まって1年くらい経ったある日、友人に誘われて4人で映画を観に行った。世界のいろんな渡り鳥の長い旅を追いかけるドキュメンタリー映画だった。映画のなかの鳥たちの美しさに感動した私は、すぐに書店に行ってハワイの鳥図鑑を買った。 図鑑をみて、ハワイには思った以上にたくさんの種類の野鳥が生息していることを知った。それらの野鳥の多くが、地球上でハワイにしか生息していない固有種で、しかもそれらの多くがすでに絶滅したか、絶滅の危機に瀕していることも知った。 なかでも、森の野鳥たち、とくにハワイミツスイ類の美しさに魅了された。普通にホノルルの街中で暮らしていたら、まず見かけることはない鳥ばかりだ。いつの日かこの図鑑に載っているような美しいハワイミツスイをこの目で見てみたいという、憧れのような思いを抱くようになった。 野鳥に興味を持ちはじめると、ホノルルの町中の身近な場所にも、ハワイならではの鳥がいくつかいることがわかるようになった。マヌオクーという真っ白なアジサシは、ハワイではホノルルの都市部のみで見られる在来種で、その可愛い顔に一目惚れした。8月にはコーレア(ムナグロ)などの渡り鳥が北から遠路はるばるやってきてハワイで越冬し、4月に再び北に向かって旅立つまで観察するのが毎年の楽しみになった。このマヌオクーとコーレアを中心に、写真も撮るようになった。 くるりとした目が可愛らしいマヌオクー(シロアジサシ) ハワイの代表的な冬鳥コーレア(ムナグロ) ハワイミツスイとの出会い そしてついに、それまで “図鑑の中でだけ会える鳥” だった、ハワイミツスイに出会う日がやってきた。 ワアヒラ・リッジよりホノルル市内を望む 野鳥と同時にハワイの花や木にも興味を持つようになった私は、ある週末、植物の写真を撮るために、コオラウ山脈にあるワアヒラ・リッジという尾根に出かけた。尾根で花や木の写真を撮りながら、ふと10メートルくらい離れた木の枝をみると、緑色の小さな鳥がとまっていた。この尾根にたくさんいるメジロに似ているが、図鑑で何度も何度も眺めた、下にカーブしたくちばしが肉眼で確認できた。 間違いない、ハワイミツスイだ! 私は息を潜め、固唾を飲んで写真を撮った。緊張している私をよそに、鳥は私の存在をあまり気にしている様子はなく、その枝にしばらくいて、やがて飛び去った。 帰宅してさっそく撮った写真と図鑑を照らし合わせた。鳥は、確かにハワイミツスイ類の一種で、アマキヒという名前だった。アマキヒは、オアフ島以外の島にも生息しているが、例えばカウアイ島の個体群はカウアイ・アマキヒ、ハワイ島のものはハワイ・アマキヒと呼ばれ、それぞれが島単位での固有種である。私が出会ったのはオアフ・アマキヒで、オアフ島の固有種だ。また別の日には、同じ尾根で、アパパネという赤いハワイミツスイにも出会うことができた。 オアフ・アマキヒ(コオラウ山中で撮影) 自分が暮らしている小さな島、そしてワイキキという世界有数のリゾート地がある観光の島オアフの、しかも街の喧騒から車で20~30分程度しか離れていない場所で、ちょっと山に入れば古来からいる美しい森の鳥たちがくらしていることに深く感動した。以降、ハワイの野鳥と、野鳥たちを育むハワイの自然の魅力にさらにどっぷりとはまっていった。 写真はすべて筆者による撮影