ハワイの蝶:カメハメハ・バタフライとコア・バタフライ

ハワイの蝶:カメハメハ・バタフライとコア・バタフライ

2種の固有種

色とりどりの花が一年中咲いているハワイの公園や庭では、たくさんの蝶をみることができる。これらの蝶のほとんどは、他の地域から人間によってハワイに持ち込まれた外来種で、もとからハワイにすんでいる蝶は、実はわずか2種類しかいない。

ひとつは、タテハチョウ科のカメハメハ・バタフライ(Kamehameha butterfly、学名:Vanessa tameamea)、もうひとつはシジミチョウ科のコア・バタフライ(koa butterfly、学名:Udara blackburnii)である。2種とも、ハワイ諸島のみに生息する固有種だ。

世界に20,000種近い蝶がいるといわれるなかで、ハワイ原産の蝶がたった2種類というのは、少ないように思える。これはまず、地球上のあらゆる大陸から遠く離れているハワイ諸島は、蝶にとってたどり着くにはあまりにも遠すぎるということだろう。また蝶は、幼虫が食べるための草(食草)や木(食樹)が種によって限定されている場合が多い。つまり、運良くハワイまでたどり着いた蝶がいたとしても、その蝶に適した食草や食樹がハワイに存在しなければ、定着できないことになる。

カメハメハ・バタフライ

カメハメハ・バタフライ
カメハメハ・バタフライ | 写真:Forest & Kim Starr

ハワイ諸島を統一したカメハメハ1世に敬意を表して名付けられた蝶。羽を広げた時の長さは5.5~7.5センチ。羽は濃いオレンジ色、羽の縁は黒色で、いくつかの斑紋がある。カホオラヴェ島以外のハワイの主要8島で生息が確認されている。山地のハイキングトレイルや森の開けた場所などでみることができる。主にマーマキ(māmaki、学名:Pipturus albidus)というイラクサ科の低木または小高木に産卵し、幼虫はマーマキの葉を食べて育つ。ハワイ語で蝶や蛾のことをpulelehuaというが、これは特にカメハメハ・バタフライのことを指しているようだ。

コア・バタフライ

緑色の小さな蝶。羽を広げた時の長さは2.2~2.9センチ。オスの前羽の根元付近は青みがかっている。後羽はやや青みが少ない。メスの羽の表側は灰色がかった茶色。羽の表側はオスもメスも玉虫のような緑色で、メスの方が明るい。ハワイの蝶で羽の表側が緑色なのはコア・バタフライだけである。その名の通り、主にコア(koa、学名:Acacia koa)の木に産卵し、幼虫は花を食べて育つ。他にアアリイ(ʻaʻaliʻi、学名:Dodonaea viscosa)などにも産卵することがわかっている。カメハメハ・バタフライ同様、カホオラヴェ島以外のハワイの主要8島で生息が確認されている。コアの木が生えている山地で見られるが、昔よりは数が減っているらしい。

以上の2種は、それぞれの祖先がいつの時代か偶然ハワイにたどり着き、運良く適切な食樹があったため定着に成功し、ハワイの環境に合わせて独自な進化を遂げた蝶たちだ。町中や海辺で見られることはほぼないので、ハワイで山にハイキングに出かけるチャンスがあれば、ぜひこれらの美しい蝶たちを探してみてほしい。

参考文献

  • Dean Jamieson, Jim Denny『Hawaiʻi’s Butterflies & Moths』Mutual Publishing(2001年)