伝説&神話

ハワイ州は虹の州

ワイルペの虹
レインボウ・ステート アメリカ合衆国50番目の州ハワイには、公式なアロハ・ステート(アロハの州)とは別に、レインボウ・ステート(虹の州)という愛称がある。その愛称の通り、ハワイでは頻繁に虹が発生する。朝方や夕方にパラっと軽い雨が降ったあと、すぐ晴れることが多く、こういうときには大抵、きれいな虹がかかる。ホノルルで普通に暮らしていると、多いときでは1週間に3度も4度も虹を見ることも珍しくない。 そういうことから、ハワイは虹にちなんだものがたくさんある。例えば、ヒルトン・ハワイアン・ビレッジには「レインボウ・タワー」と呼ばれる棟があり、その側面の大きな虹の壁画は、ホテルのシンボルとなっている。他にも、ハワイ州の車のナンバープレートには大きく虹が描かれているし、ハワイの主要な銀行のひとつファースト・ハワイアン・バンクのロゴマークも虹だ。ホノルル市が運営するバス「TheBus」の車体にも大きく虹がデザインされている。ハワイ島ヒロにあるの有名な滝に「レインボウ・フォールズ」というのがあり、ホノルルのカパフル通りにある有名なプレートランチの老舗の名は「レインボウ・ドライブ・イン」だ。ハワイで虹がいかになじみの深いものであるかわかるだろう。 ハワイの虹伝説 虹は、ハワイ語ではアーヌエヌエ(ānuenue)という。 ハワイの言い伝えでは、メネフネ(Menehune)という伝説上の小人族が、虹を作ったとされている。メネフネ達は、鳥の羽から赤色を、イリマという花からオレンジ色を、バナナから黄色を、シダの葉から緑を、海水から青を、そして女王のドレスから紫を集めた。それをカフナ(kahuna、祈祷、占い、儀式を司どる専門家)が混ぜ合わせて虹を作り出したという。つまりハワイでは、虹の色はアーチの外側から赤、オレンジ、黄、緑、青、紫の6色とされている。日本では青と紫の間に藍色を加えて7色とするのが一般的だ。 運がよければ「奇跡の虹」も 虹の外側にさらにもうひとつの大きな虹がある「ダブルレインボウ」もハワイでは普通に見られる。外側の虹は、色の並びが逆になるのが特徴。ダブルレインボーのその外側にさらにもう一つ虹があって3重になっている「トリプルレインボウ」が見られることもあるという。トリプルレインボウは「奇跡の虹」と言われるが、私はまだ見たことがない。 夕方のマーノア・バレーに架かるダブルレインボウ 虹のあるくらし 私は「ハワイdeバレーボール」というバレーボールサークルを主催していて、週末の夕方にダイヤモンドヘッドがきれいに見えるカピオラニ公園でバレーボールをやっている。バレーボール中に、ダイヤモンドヘッドをまたぐように大きな虹が出ることが多い。太陽が西に傾くにつれて徐々に色が変わっていくダイヤモンドヘッドと虹のコンビネーションは大変美しい。こんな素敵な環境で毎週バレーボールをできることをいつも幸せに思う。 写真はすべて筆者による撮影

ハワイの地名:その他の地名

ダイヤモンドヘッドから見たワイキキ
ハワイの地名といえば…… 前回、前々回と、鳥にちなんだハワイの地名を調べてみたが、ハレイヴァなどの一部を地名を除いては一般的に知られていないものが多かった。今回は、鳥に関係なくもっとよく知られたハワイの地名をいくつか紹介したい。 ワイキキ、アラ・モアナ、カイルア、ラニカイ、ハナウマ——ハワイの地名といえばまずこれらを思い浮かべる人が多いだろう。これらの地名は、もちろんすべてハワイ語である。 ハワイ Hawaiʻi まずそもそも、ハワイとはどういう意味だろうか? ハワイは、諸島全体の名前であり、通称「ビッグアイランド」と呼ばれる、最大の島の名前でもある。正確な発音は「ハヴァイイ」であるが、すでにあまりにも広く知られている名前なので、ここでは通例通り「ハワイ」と表記する。この名は、ニュージーランドやマルケサス諸島北部(ハヴァイキ、Havaiki)、クック諸島(アヴァイキ、ʻAvaiki)、サモア(サヴァイイ、Savaiʻi)など、ポリネシアはでいくつかみられる。これらの地域では共通して「祖国」もしくは「黄泉(よみ)の国」の名前を指す言葉であるが、ハワイにはそういう意味はない。しかし語源が共通した言葉である可能性は高いであろう。また、ハワイの語源はハワイロア(Hawaiʻiloa)という人物の名前に由来するとも言われている。ハワイロアは、彼の家族と8人の航海員とともに最初にハワイに住み着いたとされる伝説上の人物である。 ハワイ島マウナ・ケアの夕日 以上のように、ハワイの語源は諸説あるが、そのほかの有名な地名は意味や由来が比較的わかりやすい。 ワイキキ Waikīkī ハワイ観光の中心地ワイキキは、「噴き出す水」という意味である。正確には「ワイキーキー」と伸ばして発音する。ワイキキ一帯は昔は湿地であり、アラワイ運河ができる以前はマキキ、パーロロ、マーノアから流れる川がワイキキを通って海に注いでいたという。 「噴き出す水」という意味があるワイキキ アラ・モアナ Ala Moana ハワイ最大のショッピングセンターがある、観光客にもおなじみの地名アラ・モアナは、直訳すると「海道」となる。 アラ・モアナを海側から望む カイルア Kailua オアフ島のウインドワードに位置する、お洒落な町として観光客にも人気があるカイルアは、「二つの海」という意味。ハワイ島のコナ、マウイ島のパーイアにも同じ名前の地名がある。 ラニカイ Lanikai そのカイルアにあるラニカイ地区は、以前はカオーハオ(Kaʻōhao)と呼ばれていた。1924年から開発が始まり、現在のラニカイに改名された。「天国の(ような)海」という意味だが、英語の「heavenly sea」を直訳してハワイ語にしたものと思われる。普通ハワイ語では修飾語は名詞の後にくるから、本来なら「カイラニ(Kailani)」とすべきところだろう。 カーネオヘ Kāneʻohe カイルアの西隣の町カーネオヘは、「竹男」という意味。昔この場所に住んでいた乱暴な男の妻が、夫を「竹(ohe)で作ったナイフのような男だ」と揶揄したという話が地名の由来だという。 関連記事 オヘ(バンブー) アヌヘア:ハワイの花・植物・野鳥図鑑 ハナウマ Hanauma 穏やかな湾内でのスノーケリングで人気があるハナウマは、「カーブした湾」や「腕相撲湾」などの意味が考えられるが、弧を描くような湾の地形から付けられた名前と考えるのがもっとも自然かと思える。なお、ハナ(hana)は湾という意味なので、ハナウマ湾や、ハナウマ・ベイというのは意味が重複していることになる。フラダンスが「フラ(=踊り)ダンス(=踊り)」となってしまうのと同じである。 穏やかなビーチが人気のハナウマは、「カーブした湾」という意味 以上、ハワイの有名な地名を紹介した。ハワイの地名は、日本やアメリカ本土と比べるとある程度は地名の意味や由来がわかっている。ハワイの行く先々で地名の意味を調べ、なぜその地名がついたのかさらに調べたり想像を膨らませたりするのも、ハワイの楽しみかたのひとつだと思う。 写真はすべて筆者による撮影 参考文献 Mary Kawena Pukui, Samuel H. Elbert『Hawaiian Dictionary (Revised and enlarged edition)』University of Hawaiʻi Press(1986年) Mary Kawena Pukui, Samuel H. Elbert, Esther T. Mookini『Place Names of Hawaii (Revised and expanded edition)』University of Hawaiʻi Press(1974年)

ハワイの地名:鳥名がつく地名

イヴァ(オオグンカンドリ)
前回の記事では、ハワイ語で鳥という意味の「manu」がつく地名を紹介した。今回は、いろいろな鳥の名前がつく地名を探してみる。地名というが、前回同様、山や川などの名前も含めて紹介する。 アエオ ʻAeʻo(セイタカシギ)の地名 アエオ(クロエリセイタカシギ) ククルアエオ Kukuluaeʻo ホノルルのケワロ港(Kewalo Basin)に面していた区画の名前。ククルアエオは、アエオの別名。現在の町の姿からは想像しがたいが、昔は沼地で、塩田や魚の養殖池などがあったそうだ。当然、アエオもたくさんすんでいたであろう。 アラエ ʻAlae(バン)の地名 アラエ・ウラ(バン) アラエ ʻAlae ハワイ島のホノムー(Honomū)と、マウイ島のクラ(Kula)にある地名。また、ハワイ島のキーラウエア・クレーター(Kīlauea Crater)近くにあるクレーターや、モロカイ島にあるの山の名前にもある。 アラエ・イキ ʻAlae Iki マウイ島のキーパフル(Kīpahulu)近くにある地名。直訳すると「小鷭」 アラエ・ヌイ ʻAlae Nui アラエ・イキの近くにある地名。直訳すると「大鷭」 アラエロア ʻAlaeloa マウイ島のホノルア(Honolua)にある地名。直訳すると「遠鷭」 アラエロア・ヌイ ʻAlaeloa Nui マウイ島のホノルア(Honolua)にある地名。直訳すると「遠小鷭」 ナーアラエ Nāʻalae マウイ島のプウオカリ(Puʻuokali)にある峡谷の名前。「nā」は結びつく名詞が複数の場合に使われる冠詞で、英語では通常「the」と訳される。 ワイアラエ Waiʻalae ホノルルのウィルへルミナ・ライズ(Wilhelmina Rise)とアーイナ・ハイナ(ʻĀina Haina)の間に位置する地区の名前。直訳すると「鷭水」となり、この場所の湧水にちなんだ名前だと伝えられている。ワイアラエのすぐ近くにあるダイヤモンドヘッドにも昔はバンがいたというから、ワイアラエにも昔は水辺があって、たくさんのバンがすんでいたのだろう。今の町並からは全く想像できない。 余談だが、カーハラ(Kāhala)とカイムキー(Kaimukī)を東西に走るその名もずばりワイアラエ通りに、「Mud Hen Water」という雰囲気のいいレストランがある。このMud Henとはバンのことで、つまり店の名前はワイアラエを英語にしたものである。 カイムキーのワイアラエ通りにあるレストラン Mud Hen Water は、ワイアラエを英語に直訳した名前である。 またワイアラエは、カウアイ島のワイメア(Waimea)にある川、滝、山の名前にもある。 アララー ʻAlalā(カラス)の地名 プウアララー Puʻuʻalalā ニイハウ島北東部にある丘の名前。標高64メートル。直訳すると「烏丘」 ワイアカアララー Waiakaʻalalā ハワイ島のカウー(Kaʻū)にある湧水の名前。直訳すると「烏による水」となる。湧水は、1907年の溶岩流のあとカラスによって見つけられたと伝えられている。 イヴァ ʻIwa(グンカンドリ)の地名 イヴァ(オオグンカンドリ) カイヴァ Kaʻiwa カウアイ島のハナレイ(Hanalei)にある川や、オアフ島のラニカイ(Lanikai)にある尾根の名前。尾根からはオオグンカンドリが飛んでいる姿が頻繁に見られる。「ka」は冠詞で、英語では通常「the」と訳される。 ナーイヴァ Nāʻiwa モロカイ島のカウナカカイ(Kaunakakai)にある地名。「nā」も、「ka」と同じような冠詞だが、結びつく名詞が複数の場合には「nā」が使われる。 ハレイヴァ Haleʻiwa 観光客にも人気がある、オアフ島ノースショアにある町の名前。直訳すると「グンカンドリの家」 イオ ʻIo(タカ)の地名 イオ(ハワイノスリ) プウイオ Puʻuʻio マウイ島にある丘の名前。標高866メートル。直訳すると「鷹丘」。イオは現在ハワイ島にしか生息していないが、化石から昔は他の島にも住んでいたことがわかっている。 イオラニ ʻIolani ハワイ王室の宮殿の名前。地名ではないが、有名なので紹介しておく。ラニ(lani)には「王室の」とか「高貴な」などの意味がある。宮殿については他のたくさんのウェブサイトやガイドブックに詳しく書いてあるので、興味がある方はそれらを参考にしてほしい。 ウアウ ʻUaʻu(ミズナギドリ)の地名 ウアウ・カニ(オナガミズナギドリ) プウウアウ Puʻuʻuaʻu オアフ島のアイエアにある丘の名前。標高505m。直訳すると「ミズナギドリ丘」 ウーリリ ʻŪlili(メリケンキアシシギ)の地名 ウーリリ(メリケンキアシシギ) ナイアカウーリリ Naʻiakaʻūlili ニイハウ島にある湧水の名前。「ウーリリが探した」という意味。この湧水がウーリリよって発見されたという言い伝えに由来するそうだ。 オーマオ Ōmaʻo(ツグミ)の地名 オーマオ(ハワイツグミ) オーマオピオ Ōmaʻopio マウイ島のマーケナ(Mākena)にある地名。直訳すると「さえずる鶫」 コアエ Koaʻe(ネッタイチョウ)の地名 コアエ・ケア(シラオネッタイチョウ) コアエ Koaʻe ハワイ島のマクウ(Makuʻu)にある地名。 コアエケア Koaʻekea マウイ島ハーナ(Hāna)にある地名。ハワイ島ハーマークア(Hāmākua)にある崖の名前にもある。コアエケアとは、シラオネッタイチョウのこと。ケア(kea)は白という意味。その名の通り、尾羽が白い。尾羽が赤いアカオネッタイチョウもいるが、こちらはコアエウラと呼ばれる。ウラ(ʻula)は赤という意味。 パリコアエ Palikoaʻe ニイハウ島の北東部にある地名。直訳すると「ネッタイチョウ崖」 プウコアエ Puʻukoaʻe モロカイ島、マウイ島、ハワイ島にそれぞれある丘や、カホオラヴェ島の南にある小島の名前。直訳すると「ネッタイチョウ丘」 レレコアエ Lelekoaʻe モロカイ島北部の地名。直訳すると「ネッタイチョウの戦い」 コーレア Kōlea(チドリ)の地名 コーレア(ムナグロ) アカニコーレア Akanikōlea ハワイ島のキーラウエア・クレーター(Kīlauea Crater)近くにある地名。直訳すると「千鳥鳴き」 コーレアリイリイ Kōlealiʻiliʻi オアフ島のワイアナエ・バレー(Waiʻanae Valley)にある丘の名前。標高382メートル。直訳すると「小千鳥」 パパコーレア Papakōlea ハワイ島南部、アメリカ合衆国最南端のサウス・ポイント(Ka Lae)近くにある浜。グリーンサンドビーチとも呼ばれる。世界に4箇所しかないという珍しい緑色の砂で有名。また、オアフ島ホノルルのパウオア(Pauoa)にある、ネイティブハワイアンの住居コミュニティの名前としても知られる。直訳すると「千鳥平地」 コロア...

ハワイの地名:manu(鳥)がつく地名

ネーネー(ハワイガン)
ハワイの古い地名 鳥たちが古くより人との関わりが深いのは、日本もハワイも同じである。 日本には「鳥」がつく地名や、ツル、タカ、カモ、ウ、ハト、スズメなどの鳥に関連すると考えられる地名が数えきれないほどある。同じようにハワイの地名にも——山、谷、川、湾、滝などの名称も含めて——やはり鳥の名前がたくさん出てくる。 日本の場合、漢字が当て字であったり、縁起のよい字や雅びた字に変えられていたりして、たとえ地名に鳥の名前が入っていても、それが必ずしも鳥に由来するわけではない。鳥にちなんだものに限らず、日本の古い地名の由来の多くは、すでに歴史の彼方に消えてしまったといえるだろう。 一方、太平洋の真ん中に浮かぶハワイ諸島の古い地名は、他言語の影響を受けていないうえ、ハワイ語が音声学的に単純な言語であることもあり、ある程度は由来がわかっている。ハワイで暮らす人々の間では、地名の意味や由来が比較的よく認知されている。 そんなハワイで、鳥に関連する地名にはどういうものがあるだろうか。まずは、ずばり「鳥」がつく地名を探してみる。鳥はハワイ語で「manu」という。 アーフイマヌ ʻĀhuimanu オアフ島カーネオヘ(Kāneʻohe)にある住宅地の名前。近くには平等院がある。直訳すると「鳥群」。近くにその名も「鳥島」のモクマヌ(Mokumanu)という小島があることからもわかるように、今日でもカツオドリなどの海鳥が多く生息する地域である。ちなみに、この町の通りの多くは、フイ・イオ(Hui ʻIo)、フイ・イヴァ(Hui ʻIwa)、フイ・ウーリリ(Hui ʻŪlili)、フイ・アキキキ(Hui ʻAkikiki)、フイ・アーケパ(Hui ʻĀkepa)のように、Hui(群れ)+鳥の名前が付けられている。 アーリアマヌ Āliamanu ホノルル市の西側にあるソルトレイク界隈の別名で、もともとは近くにあるクレーター(Āliamanu Crater)の名前。アーリア(ālia)には「塩で覆われた場所」や「塩辛い」などの意味がある。火山の女神ペレ(Pele)が、家族とともにこの地で暮らしていたことがあると伝えられている。伝承では、彼女らがこの地を離れるときに、ペレの妹のヒイアカ(Hiʻiaka)が飼っていた鳥が逃げ出し、他の鳥たちが集まってきたという。 カホールアマヌ Kahōluamanu カウアイ島ワイメア・バレーの最も高い崖の名前。「カ(ka)」は冠詞で、英語では通常「the」と訳される。「ホールア(hōlua)」とは、ハワイの伝統的なソリを使ったソリ遊びのこと。名前の由来が気になる。 ハレマヌ Halemanu カウアイ島のハレマヌ・ストリーム(Halemanu Stream)という川の名前。「ハレ(hale)」は家という意味。日本風の名前にするなら「鳥ノ巣川」といったところか。いかにも鳥たちが元気にさえずる川辺の風景を彷彿する。しかし、私は実際にこの川を何度かトレッキングで渡ったことがあるが、鳥の気配すら感じたことがない。カウアイ島の森の野鳥は、特に2010年頃から急速に減少しているように思うが、昔はこの渓流一帯にもエレパイオやハワイミツスイたちがたくさんすんでいたのだろう。カウアイ島の森に再び鳥たちが戻ってくる日は来るのだろうか。 マヌアヒ Manuahi ハワイ島コナのカウープーレフ(Kaʻūpūlehu)の古い地名や、カウアイ島の谷と川の名前、さらにモロカイ島北部の尾根の名前にもある。「アヒ(ahi)」は火という意味。ハワイの火の鳥伝説といえば、人間に火をもたらしたといわれるアラエ・ウラ(バン)があるが、なにか関係あるのだろうか。いつかそれぞれの場所に行って地勢や鳥相を見てみたいものである。 その他の「鳥」がつく地名 カフルオマヌ(Kahuluomanu、直訳「鳥の羽根」)、オアフ島。 カライアカマヌ(Kalaʻiakamanu、直訳「鳥がもたらした平和」)、モロカイ島。 ハアクラマヌ(Haʻakulamanu、直訳「鳥が集まる場所のような」)、ハワイ島。 カマヌ(Kamanu、山の名前。直訳「鳥」)、カウアイ島。 カマヌワイ(Kamanuwai、直訳「水鳥」)、オアフ島。 カヌクオカマヌ(Kanukuokamanu、直訳「鳥のくちばし」)、ハワイ島。 ケアーカマヌ(Keākamanu、丘の名前。直訳「鳥の雑音」)、マウイ島。 ルアマヌ(Luamanu、クレーターの名前。直訳「鳥穴」)、ハワイ島。 マヌホノホノ(Manuhonohono、丘の名前。直訳「臭い鳥」)、カウアイ島。 プウカマヌ(Puʻukamanu、丘の名前。直訳「鳥丘」)、カウアイ島。 プウマヌ(Puʻumanu、丘の名前。直訳「鳥丘」)、カウアイ島、ラーナイ島、ハワイ島。 ワイマヌ(Waimanu、直訳「鳥水」)、ハワイ島、カウアイ島、モロカイ島(滝の名前)。 以上、「鳥」がつく地名を探してみた。 カウアイ島、ラーナイ島、ハワイ島にそれぞれあるプウマヌ(鳥丘)には現在どんな鳥がすんでいるのか、いつの日かそれぞれ訪ねてみたいものだ。カライアカマヌ(鳥がもたらした平和)や、ケアーカマヌ(鳥の雑音)などは、なにかの伝承にもとづいた名前なのだろうか。由来が気になる。 ネーネー、アラエ、イヴァなどの鳥名がつく地名は、次の記事で紹介したい。 写真は筆者による撮影 参考文献 Mary Kawena Pukui, Samuel H. Elbert『Hawaiian Dictionary (Revised and enlarged edition)』University of Hawaiʻi Press(1986年)Mary Kawena Pukui, Samuel H. Elbert, Esther T. Mookini『Place Names of Hawaii (Revised and expanded edition)』University of Hawaiʻi Press(1974年)

ハワイでハイキング:オアフ島最高峰カアラ登山

カアラ山頂からみたノースショア方面
目立たない最高峰 私が住んでいるオアフ島で一番高い山は、島の西側のワイアナエ山脈にある、カアラ(Kaʻala)という山である。高さは1,225メートル。山容は、頂が平らになった台形をしていて、あまり目立たない。ホノルルからもよく見えるが、あの山がオアフ島の最高峰であることを知っている人は少ない。 カアラ登山 カアラ山には、過去に二度登ったことがある。山頂まで登る道はいくつかあるようだが、私は二度とも島のリーワード側から登った。入り口は、ワイアナエという町からしばらく山側にはいったところにある。 登山口からしばらくは塗装されたゆるやかな登り道だが、やがて塗装道路が終わり尾根道になる。尾根道がおわると、あとは急な斜面をひたすら登ってゆく。特に景色も見られず、単調な登山だ。 我慢してしばらく登るとコア、オーヒア、マイレなどの在来植物があわられはじめ、やがてカマイレウヌ(Kamaileʻunu)という尾根の頂上にでる。尾根の上から見下ろす、ワイアナエ・バレーの景色が素晴らしい。 ここからさらに登りは続く。ちょっと恐ろしいくらいの巨大な岩をよじ上る場所もある。設置してある補助用のロープを使いながら登る。 斜面を登りきると、道は急に平坦になる。この山を遠くから眺めたときに平らに見える頂上部分だ。この平坦な場所は湿原(ボグ)になっていて、カアラ自然保護地区(Kaʻala Natural Area Reserve)に指定されている。ここからは、ハイカーが自然環境を壊さずかつ安全に歩けるように敷かれた板の歩道をゆく。ピロやオーラパなど、ハワイ原産の植物がたくさんみられた。 ピロ(カアラ山頂) オアフ島では生息数がさほど多くないアパパネ(アカハワイミツスイ)が、木々の間を飛んでゆく。さえずりも聞こえてくる。まるでカウアイ島のコーケエ州立公園にでもやってきたかのような気分になった。 湿原が終わると板の歩道もなくなり、少し進むと「End of Hiking Trail」という看板がある。近くに島の北側を見渡せる景色の良い場所があるのでそこで弁当を食べた。 アパパネ(アカハワイミツスイ) 帰りは、来た道をひたすら下っていく。往復距離13キロ、高低差1,000メートル、往復8時間のハイキングだ。オアフ島のハイキングコースでは中~上級者向けのコースに入るだろう。しばらく行っていないので近いうちに3度目のカアラ登山を試みたいと思っている。 カアラに住む女神カイオナ カアラ山には、カイオナという慈悲深い女神が住んでいると云われている。山で道に迷った人がいると、カイオナの使いであるイヴァ(オオグンカンドリ)が道案内をして助けてくれるという。私は2回とも道に迷わなかったからなのか、イヴァの姿は見られなかった。 写真はすべて筆者による撮影 ※この記事は、筆者の主観に基づいたハイキング日記であり、読者の皆様を安全なハイキングへと導くトレイルガイドではありません。この記事を参考にして実際にトレイルに行かれる場合は、必ず「ハワイでハイキング:はじめに」をお読みください。

ハワイ神話:火山の女神ペレ

オーヒア・レフアの花
大地を食べる女神 神話のなかのハワイは、八百万(やおよろず)の神の日本神道とやや似ていて、自然現象や動物に神々や精霊が宿る多神教世界である。四大神であるカーネ(Kāne)、クー(Kū)、ロノ(Lono)、カナロア(Kanaloa)を筆頭に様々な神がいるが、なかでも特に知名度が高いのが、火山の女神ペレ(Pele)である。 ハワイのすべての火山活動は、彼女の感情表現であるとされている。ペレアイホヌア(Peleʻaihonua。大地を食べるペレ)という別名が示す通り、彼女がひとたび怒れば、地面はうなりをあげ、火口は荒れ狂うように火を噴き、無限に流れ出る溶岩はたちまち町や村を飲み込んでしまう。衝動的に機嫌が変わり、大地の破壊も創造も行うペレは、予測不能、まさに火山性の神である。 伝説のなかのペレ像 ペレには多くの伝説や民話があるが、よくみられる共通点として、美男子好きで惚れやすく、嫉妬深く、負けず嫌いで、自己中心的で、怒ると情けも容赦もなくなり、しかも絶世の美人であることなどが挙げられる。なんとも人間味に溢れた神でもあるのだ。古代よりハワイの人々は、ペレに畏怖の念を抱きつつも、最大の敬意と信仰心をもって暮らしてきた。 ハーブ・カワイヌイ・カーネ(Herb Kawainui Kāne)の著作『Pele: Goddess of Hawaiʻi’s Volcanos』(1987年)によると、ペレはときには若い長身の美人であり、またあるときには腰の曲がったしわだらけの老婆として現れ、ときに白い犬を連れていることもあるという。怒ったときには体が燃えあがり、ときには完全な炎の姿にもなる。マーサ・ウォーレン・ベックウィズ(Martha Warren Beckwith)の『Hawaiian Mythology』(1970年)には、崖のように真っすぐ伸びた背中と月のようにふくらんだ胸のたいへん美しい女性だという記述もある。 ハワイに移住してきたペレ ペレは、初めからハワイにいたわけではない。神々の故国からカヌーではるばるハワイにやってきたとされている。ペレの物語には幾つかのバージョンがあるが、以下、大部分を上記の『Pele: Goddess of Hawaiʻi’s Volcanos』とリンダ・チン(Linda Ching)の『Hawaiian Goddesses』(2001年)による。 ペレは、神々の故国で生まれた。母のハウメア(Haumea)は地母神であり実りの女神、父のワーケア(Wākea)は空を支配していた。 ペレは、きょうだいたちと一緒に、兄のカーモホアリイ (Kāmohoaliʻi、鮫の神) のカヌーに乗って故国を旅立った。一説では、ペレが、姉のナーマカオカハイ(NāmakaoKahaʻi、海の女神)の夫を誘惑したために、姉の怒りをかい、故国を追われたとも云われている。 ペレたちは、まずハワイ群島の北の小さな砂州にたどり着いた。ペレは、彼女の尊い火を守るために深い穴(クレーター)を掘らなければならないが、その砂州はあまりにも小さすぎた。そのため彼女らは、ニイハウ島、カウアイ島と、住む場所を探して穴を掘りながら島々を南東に移っていった。 しかし、せっかくペレが住むのに適した土地をみつけて穴を掘っても、ペレを追いかけてきた怒れる姉——水の女神ナーマカオカハイ——が、大洪水を起こして穴を水浸しにしてしまう。ペレはやむなくカウアイ島からオアフ島、そしてマウイ島へと、南東の島々に移動していくことになる。 カウアイ島のような比較的古い北西の島のクレーターの多くは現在沼地になっているが、その理由を伝説では上のように説明していることになる。また、ペレの南東へ移動は、プレート移動にともなうハワイ諸島の誕生と火山活動の過程と一致している。 カウアイ島、オアフ島、マウイ島の3島を例にすると、それぞれが火山活動によって西からカウアイ、オアフ、マウイの順で誕生した。マウイ島の南東にはさらに新しいハワイ島——現在のペレの住処——があり、こちらは今も活発な火山活動が続いている。ハワイ島のさらに南東には、約一万年後に新しく島になるであろう海底火山ローイヒ(Lōʻihi)がある。以上は余談。 ペレは、オアフ島で現在のパンチ・ボウル(プーオワイナ、Pūowaina)やダイヤモンド・ヘッド(ラエアヒ、Laeʻahi)などのクレーターを掘ったが、いずれも海から近すぎて、火をナーマカオカハイの水から守ることができなかった。 姉との決着 オアフ島の次に、ペレはマウイ島のハレアカラー(Haleakalā)に目をつけたが、このときついに姉ナーマカオカハイは、ペレと決着する決意をした。これを知った兄カーモホアリイは、ペレに助太刀することを申し入れた。しかしペレは、これは自分と姉との戦いであるといい、兄の申し入れを断った。ペレは、あくまでも姉と一対一で勝負をしようとした。 しかし、ナーマカオカハイにそのような自尊心はなかった。ただ憎き妹がいなくなるだけでよかった。ナーマカオカハイは、ハウイ(Haui)という海蛇を同盟者として連れて現れた。ただでさえナーマカオカハイ(水)はペレ(火)よりも本質的に強い。そのうえ海蛇まで敵にまわすとなると、ペレに勝ち目はなかった。ペレは、マウイ島ハーナ(Hāna)の近くで、姉によってバラバラに引き裂かれてしまった。 戦いが行われた丘は、カイヴィオペレ (KaiwioPele、ペレの骨) と名付けられ、ペレの肉体はそこに眠っているとされている。 神となったペレ 肉体から精霊は解き放たれ、ペレはいよいよ神となった。ペレは、まずハレアカラーに鎮座した。しかし、ハレアカラーは、ペレが自身を温め続けるには巨大でありすぎた。そこでペレは、家族を集め、ハワイ諸島の東の端であるハワイ島のキーラウエア(Kīlauea)に移動した。これが最後のチャンスだ。ペレはその地で、エレパイオという森の小鳥のさえずりを聞いた。吉兆を感じた。予感の通り、キーラウエアは、ペレにとって理想的な大きさと場所だった。長い旅の末、ついに安住の地に辿り着いた。 ペレは現在、キーラウエア・カルデラのハレマウマウ・クレーター(Halemaʻumaʻu Crator)に住んでいるとされている。キーラウエアが、今日世界でもっとも活発な活火山であるのも納得だ。 ペレの現在の住処といわれているハレマウマウ・クレーター(2010年6月) ペレに捧げられた植物 キーラウエア付近にもたくさん自生するオーヘロ(ツツジ科)は、ペレに捧げられる神聖な植物とされている。昔のハワイ人は、オーヘロの果実を食べる前には必ずペレに果実を奉納し、祈りをささげてから食べていたという。 『ハワイ島の木』であるオーヒア・レフア(フトモモ科)も、ペレとの関わりが深い。オーヒア・レフアとペレの伝説については、私が制作している姉妹サイト、アヌヘア:ハワイの花・植物・野鳥図鑑の「オーヒア・レフア」のページに詳しく書いたので興味がある方はご覧いただきたい。 オーヘロ(ハワイ火山国立公園で撮影) フラの守護神 ペレには、踊り(フラ)を司る神としての一面もある。ペレと、その最愛の妹ヒイアカ(Hiʻiaka)、そして同じくペレの妹であるラカ(Laka、愛と富の女神、フラの女神)の三柱は、フラの至高の守護神であり、フラのメレ(歌)やチャントには、これらの神々に捧げるものが多数ある。 写真はすべて筆者による撮影 参考文献 Martha Beckwith『Hawaiian Mythology』University of Hawaiʻi Press(1970年)Linda Ching『Hawaiian Goddesses』Hawaiian Goddesses Publishing Co.(2001年)Herb Kawainui Kane『Pele: Goddess of Hawaiʻi’s Volcanos』Kawainui Press(1987年)

ハワイ神話:月の女神ヒナ

ココ・ヘッドと満月(オアフ島)
月に暮らす女神 月にはヒナという女神が暮らしていて、毎日カパ布を作っている……。日本では、月にはウサギがいて餅をついているというのが定番だが、ハワイでは、月を見上げるとヒナと彼女の瓢箪の容器が見えるといわれている。 ヒナ(Hina)は、ハワイだけでなく、タヒチやその他の地域の神話にも登場する、ポリネシア地域でもっとも古い女神である。古代太平洋地域での女性や母の象徴であったようだ。ハワイ語で女性のことをwahine(ワヒネ)というが、この言葉はヒナに由来するらしい。 ヒナが登場する神話は内容が様々だが、月や海に関連する話が多い。月を表すハワイ語のひとつにmahina(マヒナ)があるが、これもヒナと関係しているに違いない。 また、ヒナというハワイ語には「白色」や「銀色がかった灰色」という意味がある。これは、月光の明るい色のことを表しているとも考えられる。 月はハワイ語で「マヒナ」と呼ばれる カパ作りの名手 ヒナには、働く女性、特にカパ作りに関係する話も多い。ヒナには次のような伝説がある。 毎日のカパ作りと家族との確執に疲れたヒナは、瓢箪の容器に彼女が気に入っているものを入れてハワイを逃げ出した。虹の道を登って太陽に行ってみたが、太陽は彼女には暑すぎた。次の日の夜、ヒナは再び虹の道を渡って今度は月に移り、そこで暮らし始めた。ヒナがハワイを去るとき、ヒナの夫が引き止めようとしてヒナの足をつかみ引きちぎってしまったのだが、それでもヒナは、平和な月で安らかに暮らしている。 またある伝説では、ヒナは、月に逃げるときに彼女のカパ作りの道具一式も持っていったという。ヒナはカパ作りの名手で、彼女が作る白くて柔らかいカパは極上の品質であるという。満月の夜、月の周りにたまに白い積雲が現れるのは、ヒナが新しく作ったカパを乾かしているからだといわれている。 たくさんの名前 ヒナには以下のような名前のバリエーションがあるという。マラマ(malama)は、ハワイ語で月を表すもう一つの言葉。 Hina-hanaia-i-ka-malama ヒナ・ハナイア・イ・カ・マラマ(月で働くヒナ) Hina-i-ka-malama ヒナ・イ・カ・マラマ(月にいるヒナ) Hina-i-kapaʻi-kua ヒナ・イ・カパイ・クア(カパ布を作るヒナ) Hina-hanai-a-ka-malama ヒナ・ハナイ・ア・カ・マラマ(月で滋養を蓄えたヒナ) さらにヒナは、hualani(フアラニ、天国の果実)と呼ばれるスイートポテトの一種とも関連がある。「月で滋養を蓄えたヒナ」という意味のヒナ・ハナイ・ア・カ・マラマという名前は、ヒナが月でこの芋を発見したという伝説に由来するそうである。  ヒナとバニヤンの木 インディアンバニヤン(ホノルル市内で撮影) さらに別の物語では、月の表面の暗くみえる部分、いわゆる「月の海」は、ヒナが作るカパ布の材料であるバニヤンの木だとされている。ヒナは、そのバニヤンの下にある家で暮らしているそうだ。あるとき、ヒナがバニヤンに登って、カパの材料となる樹皮を採るために枝を折ったが、誤って枝を地球に落としてしまった。その枝が地球で根付いて、最初のバニヤンの木になったという。 ヒナの絵本 ハワイの書籍店のハワイアンコーナーや絵本コーナーをのぞいてみると、ヒナが主人公の絵本がいくつかある。ミハエル・ノーデンストローム作の『Hina and the Sea of Stars』という絵本を手に取って読んでみたが、カラフルな絵とシンプルな英語で、数あるヒナの伝説の断片を繋げて物語が作られていた。またノーデンストローム氏の同じシリーズとして、火山の女神ペレが主人公の絵本もあった。2冊セットで、お子さんへの英語勉強も兼ねたハワイのお土産にいいと思う。 ワイキキのビルの間から登る満月。2014年8月10日、この日の満月はスーパームーンだった。月を見るたびにヒナやバニヤンの木のことを思うが、私の目にはやはりウサギに見えてしまう。私にもいつかヒナや瓢箪の容器、それにバニヤンの木が見えるときが来るだろうか。 写真はすべて筆者による撮影 参考文献 Martha Beckwith『Hawaiian Mythology』University of Hawaiʻi Press(1970年)Dietrich Varez『Hina: The Goddess』Petroglyph Press, Ltd.(2002年)